海外コメンタリー

ビジネスインテリジェンス市場はどれほど成熟しているか--今後を占う

Boris Evelson Forrester Research 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-06-23 06:30

 ビジネスインテリジェンス(BI)市場は成熟してきたか。答えは「ノー」だ。

 BI市場の買い手側は、成熟からはまったくほど遠い状況にあり、多くのBI事業者にとっては、未開拓の大きな市場が残されている。筆者が所属するForrester Researchの調査によれば、企業では依然として、スプレッドシートやデスクトップデータベースを使った、シャドーITのように使われている独自のBIツールが主流で、企業の構造化データのうち、キュレーションされて、エンタープライズ向けのBIツールやアプリケーションで利用されているのは20~50%にすぎない。

 ただし、市場の売り手側についてはまた話が違う。Forrester Researchが実施した最近の調査では、この分野は高度に成熟し、コモディティ化した、競争の激しい市場であることが明らかになっている。競争の激しい市場は変化せざるを得ない。Forresterは、BI事業者やBIの買い手が今後3~5年の戦略の指針とすべき、3つの予想を発表した。

 1.コモディティ化と複数のテクノロジの統合が起こる。Forrester Researchはもはや、レポーティングとクエリ、オンライン分析処理(OLAP)、データの可視化、ダッシュボード、データ探索、ロケーションアナリティクスなどの技術を、BI市場の下位市場カテゴリには分類していない。現在では、多くのエンタープライズBIプラットフォームがこれらの機能の大半を持っている。クラウドBIやモバイルBIでも同様のコモディティ化が進んでおり、ほとんどの大手BI事業者は、クラウドベースのマルチテナントアーキテクチャ上にプラットフォームを構築しているか、オンプレミス版に加えてクラウド版を提供している。現在ではモバイルBIも、ほとんどのBIプラットフォームで単なる機能の1つとして提供されている。同じく大きな状況変化として、企業の技術プロフェッショナルを対象とした、大規模で拡張性の高いBIプラットフォームと、ビジネスユーザーを対象とした、より融通が利くアジャイルBIツールという対立軸も、今では過去のものになっている。エンタープライズBIプラットフォームを提供している事業者のほとんどは、エンドユーザーが使いやすいようにアーキテクチャの見直しを行っており、多くのアジャイルBIツールは、大企業向けの機能を大幅に強化している。このため、最新の調査「BI TechRadar」では、すべてを包含した1つの分類である「エンタープライズBI」を使用している。

 2.今後3~5年で、多くの合併、買収、資産の売却、倒産が発生する可能性もある。73社もの事業者を支えるだけの市場は存在しない。これは、大手エンタープライズソフトウェア事業者にとってはよいニュースであり、独立系の小規模なBI事業者にとっては悪いニュースだ。73社のうち上位15社から20社を見ると、主な差別化要因は多くが消えてしまっており、企業がすでに利用しているエンタープライズソフトウェア事業者(Microsoft、AWS、SAP、Oracle、IBMなど)が提供する以外のBIプラットフォームを、6~7桁ドルの予算を投じて購入する理由はないかもしれない。これらのBIソフトウェアが、すでに利用している大手エンタープライズソフトウェア事業者から無料または大幅な割引で手に入る場合もあるとすればなおさらだ。


今後5~10年で、多くの独立系ビジネスインテリジェンス事業者が、大手企業に吸収されるか、特定の業界やビジネス領域に特化したソリューションに移行するか、倒産するだろう。
提供:Businessintelligence.com

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