Nokiaの日本法人は6月22日、キャリアやサービスプロバイダー向けルータの新モデル「7750SR-s」シリーズと、同シリーズに搭載する新型ネットワークプロセッサ「FP4」を発表した。10~12月の提供を予定し、クラウドや5G、IoT時代のペタクラスのトラフィックに対応し得る能力をうたう。

Nokiaの第4世代ネットワークプロセッサ「FP4」
同社は、インターネットサービスの高度化やIoTに代表される接続デバイスの増加などを背景に、IPネットワークを利用するアプリケーションやコンテンツのトラフィックがますます複雑かつ大規模になると予想する。
同日記者会見したNokia アジア太平洋地域 IP/Opticalネットワーク事業責任者のKent Wong氏は、2020年のネットワークトラフィックが年間3.96ゼタバイトに、2025年にネット接続されるIoTデバイスが1000億台に到達するとのベル研究所の予測を紹介。「爆発的なネットワーク需要に対して、拡張性、適応性、安全性の3つの観点からIPネットワークを再考しなければならない」と語った。
Nokiaのネットワークプロセッサとしては第4世代にあたるFP4は、プロセスルールに業界初という最新の16nmを採用。最大2.4Tbpsの処理能力と、ネットワークトラフィックの分析や可視化を実現するという独自のインテリジェントメモリを搭載している。

トラフィックのコンテキスから最適なネットワーク運用につなげるインテリジェンスをルータにもたらすという
Wong氏は、インテリジェントメモリが動的かつ柔軟なネットワーク制御を可能にすると説明する。「キャリアやプロバイダーは、トラフィックのコンテキストをもとに、SDNコントロールを通じてFP4にさまざまポリシーを適用できる。その結果を収集、分析するサイクルによってポリシーを最適化し、ネットワーク運用の自動化につなげられる」(Wong氏)
またこの機能は、ネットワークやシステムをダウンさせる分散型サービス妨害(DDoS)攻撃への新たな対策も可能にするという。近年のDDoS攻撃では、数百Gbpsクラスの攻撃トラフィックが珍しくなくなり、2016年に出現したマルウェア「Mirai」などに感染したIoTボットネットの拡大が、これに拍車をかけつつある。

大規模化する一方のDDoS攻撃にも新たな対策手法を提供する
「現在のルータではDDoS攻撃を防げず、攻撃トラフィックを別の対策機能に転送させて"そぎ落とす"しかない。FP4は将来的に、攻撃パターンとシグネチャによる攻撃の検知とブロックをルータで実現し、現在の対策に伴うコストや負荷を軽減する」(Wong氏)
FP4を搭載する7750SR-sシリーズは、スイッチング能力が最大9.6Tbpsの「7750 SR-1s」から同115.2Tbpsの「7750 SR-14s」までの4モデルをラインアップする。SR-14sでは100Gビットイーサネット(bE)を1440ポート収容する高いポート密度が特徴で、将来的にスイッチング能力を約2倍の288Tbpsに拡張でき、標準仕様の策定が進められているテラbEにも対応できる準備がなされている。

7750SR-sシリーズのラインアップ
また、1世代の前のネットワークプロセッサ「FP3」を搭載する既存製品向けに、FP4搭載のネットワークカードを提供するほか、大容量ルータの新モデル「7950 XRS-XC」も投入する。7950 XRS-XCは、ファブリックシャーシ無しで6台までのルータを論理的に1台のルータとして運用でき、現行では最大576Tbps(0.576Pbps)のスイッチング能力を有する。
日本法人のIPルーティング本部長を務める鹿志村康生氏は、「現行性能でペタクラス対応をうたうのはやや微妙だが……」と前置きしつつ、「これからも増加し続けるトラフィックに対応し得るシステムが現実のものになってきている」と説明した。