日本ワムネットは6月22日、大容量ファイル転送の新サービス「DIRECT! EXTREME」を8月から提供すると発表した。既存サービス「Direct!」の後継にあたり、新サービスでは、UDP転送による高速化や、サーバが不要なクラウドサービスへ移行、送受信処理を自動化するツール(オプション)などを特徴している。
初期費用は5万円で、月額費用は転送量によって複数のプランを用意した。最小構成となる月間転送量50Gバイトの「EXTREME50」が3万円、同100Gバイトの「EXTREME100」が5万円、同500Gバイトの「EXTREME500」が20万円で、月間転送量が1Tバイトを超えるプランも用意する。
サービスは、クラウド上に"私書箱"を用意するイメージになるという。クラウドがファイルを送受信する際のハブになり、送信者はクラウドにファイルをアップロードし、受信者がクラウドからファイルをダウンロードする。"私書箱"を持つユーザー同士でファイルを受け渡しができる。送受信するファイルの数に制限はなく、ファイルサイズは最大2Tバイトまで対応。サービス提供基盤には、Microsoft Azureを採用した。
DIRECT! EXTREMEのサービス概要図。クラウド上に「私書箱」を用意するイメージで、私書箱を持つユーザー同士でのみ安全にファイルを送受信できる
UDP転送で既存サービス比7.8倍の高速化
同サービスの主な使い方は2種類。ウェブブラウザからHTTP/TCPのプロトコルでファイルを転送する「通常モード」と、専用クライアントソフトからUDPのプロトコルでファイルを転送する「高速モード」がある。いずれも通信経路上でデータを暗号化し、暗号化方式には通常モードではSSL、高速モードではAESを使用する。
高速モードは、専用クライアントソフトのインストールが必須となるが、最大のメリットはファイルを高速転送できる点にあるという。同社が実験で1Gバイトのデータ転送にかかった時間を計測したところ、HTTP/TCPを使う既存サービスが173秒だったのに対し、DIRECT! EXTREMEの高速モードは22秒と短く、約7.8倍の高速化を実現した。
また高速モードは、「オンザフライ型」のファイル転送ができる。これは、クラウドにアップロードしている途中のファイルであっても、データがダウンロード可能なサイズになり次第、受信者がダウンロードを開始できる機能。ダウンロード可能になった時点で、受信者のクライアントソフトに通知される。
ファイルの送受信に伴う処理を自動化するツールも、オプションで提供する。高速モードのクライアントソフトと組み合わせて使うもので、これによって例えば、受信したファイルを別のディレクトリに格納したり、ネットワークプリンタで印刷したりといった処理が、都度指定することなく自動的に行われる。
オプションで自動化ツールを提供する。クライアントソフトと連携してデータ送受信にともなう処理を自動で実行できる
日本ワムネット 代表取締役社長の石澤幸信氏
既存サービスのDirect!は、米WAM!NETが開発し、グローバルで展開しているデータ通信サービス。国内向けに日本ワムネットが販売している。今回はDirect!よりも高性能なサービスを目指して日本ワムネットが自社開発した。今後はDirect!の販売を終了し、新サービスに軸足を移す。既存サービスは、主に出版業界などで使われているが、新サービスでは「映像業界などを狙っていく」(日本ワムネット 代表取締役社長の石澤幸信氏)としている。