展望2020年のIT企業

IoTハードの開発に挑む元大手メーカーの技術者ら

田中克己

2017-07-13 07:30

ネット接続型家電を企画、開発するCerevo

 Cerevoの代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める岩佐琢磨氏は「新しいジャンルの商品を作りたい」とし、約5年間勤務したパナソニックを飛び出し、2008年1月に同社を立ち上げた。持続的な商品作りが中心になった大手メーカーにいたら、革新的な商品やサービスを創り出せないと思って、起業を決断したのだろう。

 開発する商品は、ネット家電の領域に入るもの。10年以上前から関連商品は販売されているが、売れ行きは今ひとつ。だが、クラウドやWi-Fiなどの普及が新しい商品を生み出し始めている。IoTやAIの機能を取り込んだIoTハード商品も創り出されてきた。

 そんなIoTハード商品やネット家電の開発、販売にベンチャー企業が挑戦できる環境も整ってきた。「ハードを手がけるピースがそろった」(岩佐氏)。第三者が提供する物流や決済などのサービスを組み合わせれば、サプライチェーンの仕組みを築ける。

 商品の大きさや重さ、機能などを記載したラベルを作るだけで、商品の受注から決済までの機能を提供するサービスもある。インターネットから世界中の倉庫の在庫を確認したり、出荷先を指示したりするサービスもある。SNS(交流サイト)もベンチャーの販売を支援する。莫大な広告宣伝費をかけなくても、効率的な宣伝を打てるからだ。

 製造のアウトソーシングも容易になってきた。Cerevoは今、中国や台湾、フィリピンなどの工場を目的に応じて使い分けている。自ら部材を調達し、品質やコストの管理も徹底する。「電子部品などが簡単に買えることも、ベンチャーのモノ作りを可能にさせた」(岩佐CEO)。大手メーカーしかモノ作りができなかった時代から、誰でもネットをクリックするだけで必要な部品を海外からも購入できる。最適な生産工場も選択できる。

人体を改造するIoTハード商品に注目

 なのに、ネット家電などIoTハード商品を手がけるベンチャーは日本にまだ少ない。1つは、インターネットやソフトの技術を組み合わせるIoTハード商品を開発するには、電気設計や組込みソフト、サーバー、機械設計、商品デザインなどの技術者らが必要になること。ソフトの開発に比べて、開発費用も開発時間もかかる。「金型はいるし、認証や輸出入など法律的な問題もあり、開発から販売までの期間は最低でも1年になる」(岩佐CEO)。

 もう1つは、必要な資金の調達が難しいこと。ベンチャーへの投資は米国の10分の1、100分の1と言われている。ハイリスク、ハイリターンを好まない傾向があるからだろうか。もう1つは、技術者らに危機感がないこと。大手企業にいれば、雇用が安定するので、冒険したい技術者は少ない。「つぶれるはずはない」とも思っているのだろう。

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