そうした中でも、Cerevoには大手メーカーを辞めた技術者らが集めってくる。2014年5月の社員は13人だったが、2017年6月には約90人に増えた。新しい商品作りに挑戦したい技術者の受け皿にもなっているので、採用に困らないという。「ネット家電をやりたくても、やれる会社が日本にはない」(岩佐CEO)ので、取り合いにもならない。家電の技術者は日本に数多くいるので、ソフトのように米シリコンバレーに求める必要もない。
同社が開発した商品は、累計30を超える。「そんな商品ジャンルがあるのか、と言われるものを生み出してきた」と、岩佐CEOは自慢する。分かりやすく言えば、ソニーの「ウオークマン」のような商品だ。デジタルカメラなどの映像をリアルタイムにネット配信する装置がその1つ。販売目標は1万台。1カ国で100個売り、100カ国で販売すれば1万個になる計算だ。デスクスタンドもそうだ。
そのため、海外の展示会に積極的に出展する。「販売先を見つけられるし、すぐに商談にもなる」(岩佐CEO)とし、出展数は年10~20になる。毎年1月に米ラスベガスで開催される情報家電見本市CESには、5年連続でブースを出した。「世界のメディアが面白いとなれば、取り上げてくれる」(同)。
掲載された記事を読んだ世界の販売店から問い合わせがくる。事実、取引は世界60カ国にもなり、「出展に見合うリターンがある」(同)。放送関連やアニメ関係の展示会へと広げてもいる。海外売り上げも増えており、最近は半分を占める。
岩佐CEOは「人体を改造するものに興味がある」と、商品開発の方向を明かす。メガネやコンタクトレンズ、洋服も、人体改造の1つだという。メガネは視力を2倍にも3倍にもするデバイス。そんなイメージで、「机に座ると、3本目、4本目の手が現れて、仕事を手伝ってくれる」というIoTハード商品。岩佐CEOは、そんな生産性を大幅に向上させる商品企画にワクワクしている。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。