マストドンの"懐具合"は?
拡大し続けるマストドンだが、池澤氏は、Rochko氏に最初からこの規模を想定していたのかを尋ねた。鷲北氏からは、クラウドファンディングを使ったきっかけについて質問が飛んだ。
Rochko氏によれば、マストドンのプロトタイプはAPIだけだったが、学生で時間があったことから、サービスとして完成させようと考えたそうだ。そのために資金が必要と考え、クラウドファンディングのPatreonを利用。「うまくいかないかもしれないし、ここまで大きくなるとも思っていませんでした。ただ、ニッチな位置付けになるのではないかと考えていたのですが」という。
「マストドンだけで食べていけますか?」との池澤氏の問いにRochko氏は、「今は非常にいいレベルでお金をいただいています。5月は139ユーロで、5万ユーザーをホスティングできました。そうすると予算に少し余裕ができたのでプロジェクトマネージャーを雇い、他の開発者とのコミュニケーションを助けてもらっています」と現状を紹介した。
Rochko氏には、ベンチャーキャピタルからオファーもあったという。しかし、他の収益化策として、広告やユーザーデータを売る、あるいは有料のプラットフォームにするよりは、クラウドファンディングの方が好ましいと考えた。「マストドンに価値があると思ってくれた人たちのお金ですから、それはとてもいいアレンジメントです。ここまで人気が出たので、私の期待や野心も高まっています」と語った。

モデレーターを務めた角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員の遠藤諭氏
遠藤氏や池澤氏は、日本では言語などの関係から大手のクラウドファンディングを利用しづらいのではないかという意見を寄せた。鷲北氏は「mstdn.jp」の経緯を説明し、特に日本では立ち上がりが急ピッチだったために、自宅サーバのデータをクラウドのデータセンターへ移すことなどに対して、さくらインターネットという立場から支援したという。その運用経験から鷲北氏は、「なぜデータベースはMySQLではなくPostgresSQLを採用したのですか」と質問した。
Rochko氏は、「Railsの開発者にとってPostgresSQLはデフォルトで選ぶ、最もポピュラーなチョイスです。MySQLにもパフォーマンス面などで相当なアドバンテージがあると思いますが、カラムタイプの検証を厳しくしなければなりませんし、クエリプランニングにパフォーマンスの最適化が必要です。これはNoSQLでも同様ですね」と回答。
鷲北氏は、「きちんと考えられているんですね。『ゾウがマスコットだから』という理由だったらどうしようかと思いました」と応じ、会場の笑いを誘った。