この連載ではさまざまな事例をUIやUXの観点から考察しているが、今回は、UIやUXの基本に立ち返ってみたい。読者諸氏はUI(User Interface、ユーザーインターフェース)とUX(User Experience、ユーザーエクスペリエンス)、それぞれの意味をきちんと説明できるだろうか。
詳しくは過去の記事のシリーズも参照していただきたいが、ここであらためて論じることで、より深く理解するための助けとなれば幸いである。
UIとUX
ユーザーインターフェースとは、システム(PCやスマートフォン、あるいはその上のアプリケーション、もしくはウェブサービスなど)とユーザーとの間にあり、システムとユーザーとの間を橋渡しする部分のことである。
PCやスマートフォンのUIはキーボードやタッチパネル、ディスプレイなどであり、アプリケーションやウェブサービスのインターフェースは主に、ディスプレイ上にグラフィカルに表示され、マウスポインタやタッチなどで操作するGUIなどである。コンピュータシステムに限らず、物理的な案内板のようなものも広義のUIの一種である。
ユーザーはPCなどハードウェアのUIを介してアプリケーションなどソフトウェアのUIに触れ、それを通してアプリケーションやソフトウェアを使うことになる。
最近では音声インターフェースを使うアプリケーションも広がってきたが、ハードウェア的にはマイクやスピーカがそのためのUIであり、マイクで拾った音を音声認識したり、音声を合成してスピーカーから出力する部分がソフトウェア的なUI部分である。
PCのような汎用の機器ではなく、Amazon Echoのように特定の目的に特化した機器だと、ユーザーから見るとハードウェア/ソフトウェアの区別はつきにくいし、そもそもその区別は気にされるべき部分ではない。
そして、Amazon Echoはそれ自体が、各種ウェブサービスへのインターフェースであると言える。
ユーザーエクスペリエンスとは、システムやサービスを利用したりすることに対して、ユーザーが受ける感覚、反応、感情などのことである。
ユーザーの内面の話であり、システムやサービスそのものの利用時だけではなく、(必要に応じて)その前後も考える必要があるし、周囲の状況なども考慮する必要がある。
ユーザーがあるシステムを使うとき、その大部分はシステムのUIを通じてやりとりを行うので、UIはUXに大きな影響を与える。
しかし、UIはシステムとユーザーの間の部分であり、UXはユーザーの内面の話であるので、UIはUXの一部として包含されるわけではないし、ましてや 高度なUIイコールUX、などではない。
携帯音楽プレーヤーが電車などに乗りながら音楽を聞くことを可能にしたように、そのシステムが可能にする体験(とそれによりユーザーが受ける感覚など)もUXである。地図や案内板をたどってユーザーが目的地に付くまでに感じる不安や安心も、UXである。
ざっとウェブ上で検索を掛けて見た感じでは、UIとUXの違いに関する誤解は以前よりは減っているように見受けられるが、まだまだ少なくもないようなので、資料など読んだりする際には気をつけねばならない。
UI/UX 概念喩え図 UIとUXの違いを喩えで説明する図はいろいろ考案されているがここでも描いてみた。UXはこれに加えて周囲の環境からの影響なども含みうる