ヴイエムウェアは6月27日、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)分野での同社の取り組みをメディア向けに紹介した。国内外でHCIの企業導入が加速しているといい、販売やサポート体制を強化する。
サーバ、ストレージ、ネットワーク、システム管理などを統合したHCIは、ITインフラのさらなる仮想化やインフラの構築および運用を簡素化するソリューションとして認知されつつある。サーバベンダーを中心とするアプライアンス製品が提供されていることから、ヴィエムウェアはソフトウェアベンダーの立場で、HCI分野における同社の特徴をアピールした。
VMware ストレージ&アベイラビリティ担当 上級副社長兼ゼネラル マネージャのYanbing Li氏
VMware ストレージ&アベイラビリティ担当 上級副社長兼ゼネラル マネージャのYanbing Li氏は、HCIが主にストレージニーズの観点から市場で注目されているとし、「従来のNASあるいはFC-SANのニーズは、10年後にはほぼ無くなり、HCIがストレージ市場の主流になる」と述べた。
オンプレミスから徐々にクラウドへとシフトするITインフラで同社は、ソフトウェア定義によるアプローチとして、「ソフトウェアデファインド・データセンター」(SDCC)や、「クロスクラウド・アーキテクチャ」などを推進している。ただ、一足飛びにクラウドへシフトできない企業では、その"橋渡し役"としてHCIに注目しているといい、現時点ではストレージがその切り口になっているようだ。
VMwareは、ソフトウェア定義のストレージソリューションとして「VMware vSAN」や「VMware vSphere Virtual Volumes」(VVOL)を提供している。Li氏は、「vSphereに統合されたvSANは、サーバと共通した運用によって管理を簡素化できる点から、300社以上のクラウドプロバイダーに採用され、既にクラウドストレージ基盤となっている」とコメント。一般企業においても8000社以上がvSANを採用し、特にこの半年ほどで3000社近く増加したという。
VMwareのHCIの構成
製品としては多様な提供形態を特徴に挙げる
vSANを切り口とするVMwareは、ハードウェアベンダーやシステムインテグレーターといったパートナーと、多様な形態のHCI製品を展開することで、その普及を図っているという。ユーザーは、ハードウェアベンダーが提供する推奨構成に基づいた製品だけでなく、ユーザーの希望に応じたハードウェアを選択してHCIを構築できるのが、HCIにおけるVMwareならではの特徴だと、Li氏は強調した。
またLi氏は、多くのユーザー企業がHCIをミッションクリティカルなアプリケーションの運用に採用していると説明。例えば、デンマークを拠点に欧州で1万2000店舗以上のスーパーマーケットを展開するCOOPは、在庫管理や会員顧客管理などのアプリケーションを4000台上の仮想サーバやvSANのオールフラッシュストレージで運用している。航空製造大手のAirbusでは、世界最大の旅客機のA380の機内にvSANストレージを設置して、30万以上のセンサから発信されるデータの分析に用いているという。
世界最大の旅客機でもvSANが使われているという
ヴイエムウェア ソリューションビジネス本部長の小林泰子氏は、国内企業でもHCIの導入意向が強まっていると説明し、同社のアンケートでは20%の企業がHCIを導入済み、50%が2年以内にHCIを導入する予定だという。
このため国内では、サーバベンダーやシステムインテグレーター、クラウドサービス事業者との協業体制を強化すると同時に、保守・サポート体制も拡充する。6月には、vSANとHCIの専任エンジニアをパートナー事業部門に設置したほか、7月1日にはvSAN専任の保守チームを新設する。
国内におけるHCIの主な用途は仮想デスクトップ基盤(VDI)にとどまっているというが、小林氏は多様な製品の提供形態や保守サービスなどの強化を通じて用途の拡大を図り、「HCIの検討にVMwareが指名されるようにしていきたい」と語った。