マルチクラウドの現状:Ciscoはほかの企業と同じく、パブリッククラウド市場に参入しようと試みたが、3月には「Intercloud」サービスの提供を停止しているという。従ってRobbins氏が、基調講演のクラウドに関する部分で、同社が今後マルチクラウド管理をサポートするという新たな戦略について語ったことは不思議ではない。
クラウドコンピューティングは、エンタープライズITの単純化を追求する取り組みとして始まったが、増え続けるSaaS、PaaS、IaaSなどの各種サービスに対する支持が広がり、今ではデータのコントロールとセキュリティが問題になっている。
Robbins氏は、「これは、われわれが解決しなければならない大きな課題だ」と述べている。「今後は1つのクラウドだけではなく、非常に多数のクラウドが使われることになる。そしてネットワークには、企業のポリシーとセキュリティを維持することによって、企業がこの状況を乗りきるのを助ける力がある」
筆者の見解:筆者が所属するConstellationは、ほとんどの顧客にとって、マルチクラウドは正しい方向性だと考えている。しかし、マルチクラウド管理に軸足を移そうとしている企業は、Cisco以外にも多数ある。同社は、市場の中での自社の適切な位置づけを見つける必要があるだろう。
AppleとCiscoの関係がさらに近づく:Robbins氏は、サプライズゲストとして、AppleのCEOであるTim Cook氏を壇上に呼んだ。2人の会話の大部分は、両社のパートナーシップに関する一般的な話題が占めていた。両社の関係は、2年前に企業ユーザー向けの「ファストレーン」サービスを発表したことで大きく近づいた。これは、Ciscoのネットワーク製品と「iOS」デバイスの相性を高めようとするものだ。
Robbins氏の講演では、これに匹敵するような発表こそなかったが、Ciscoのセキュリティ製品「Cisco Umbrella」と「Cisco Clarity」の機能を1つのアプリで使用できる、「Security Connector」が発表された。このアプリは、インシデント調査、悪質サイトのブロック、DNS要求の暗号化などの機能を持っており、モバイルデバイス管理プラットフォームと組み合わせて使うことで、iOSデバイスの管理にも使用できる。
筆者の見解:発表の面では大きな花火は上がらなかったものの、Cook氏の登壇は、CiscoとAppleの関係が良好であることを示す証拠だと考えていいだろう(とはいえ、Cook氏もRobbins氏も具体的な数字には触れなかった)。いずれにせよ、このパートナーシップは理屈の上では両社にとって筋が通っている。Appleはエンタープライズ市場に参入しやすくなり、Ciscoは自社のネットワーク製品がiOSデバイスと相性がいいと売り込める。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。