日本IBMは6月30日、クラウド型CRMや人工知能(AI)を活用したCRMコンサルティングサービス部門「Bluewolf専門チーム」を設立した。BluewolfはSalesforce.comパートナーの1つで、日本IBMはSalesforce関連事業を専門チームに集約。5年後に1000人体制の事業規模を目指す。
Bluewolfは米IBMが2016年5月に買収した。IBMとSalesforceは、2017年3月にAI活用を含む戦略的提携を発表しており、今回の「Bluewolf専門チーム」設立は、グローバルでの提携に基づく取り組みの1つだとしている。
IBMとSalesforce.comによる協業内容
記者会見した日本IBM 執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業本部 戦略コンサルティング&デザイン統括の池田和明氏は、「さまざまなサービスがコモディティ化する中で、企業はいかにして顧客体験を高め、顧客との関係を強めていくかが課題。CRMの重要なソリューションを提供するSalesforceやBluewolfの知見を生かしたサービスを日本でも展開したい」と話した。
IBMおよびBluewolf、Salesforceによるプロジェクト事例の1つに、米General Motors(GM)のカーナビゲーションシステムを通じたアドバイザリーサービスの「GM OnDash」があるという。同サービスでは、ドライバーがカーナビに話しかけたメッセージをIBMの「Watson」で解析し、Watsonが導き出した洞察をSalesforceの「Einstein」が取り込み、具体的な情報を加えて、ドライバーに応答する。こうした仕組み作りなどをBluewolfが支援した。
IBM、Salesforce、Bluewolfの支援によるGMの事例
Bluewolf専門チームを担当する理事 グローバル・ビジネス・サービス セールスフォース・プラクティス・リーダーの浅野智也氏によれば、上記の事例では、GMが最新のテクノロジを活用したサービスによる体験をドライバーに提供し続けることで、継続的にGMの自動車を利用してもらう狙いがあるという。この他にも、製薬企業が開発した医薬がどのような罹(り)患者に有効かなのかを検討する際にAIを活用するケースなどがあるという。
Bluewolfでマネイジングディレクターを務めるGreg Kaplan氏は、同社が提供するサービスの特徴として、(1)企業の取り組みを通じたビジネスの成果を重視、(2)テクノロジを活用したアプローチ、(3)企業の顧客体験を重視するアプローチ――を挙げた。同社では、企業のデザインと創造、変革を、Salesforceのテクノロジで支援する「Bluewolf Sightline」を提供している。
日本側の協力体制としてセールスフォース・ドットコム 常務執行役員 アライアンス本部長の手島主税氏は、企業が抱える課題としてデータの活用方法、顧客ニーズの把握、経営戦略の実行スピードを挙げ、「日本でもIBMやBluewolfとのエコシステムの強化を図りながら、企業を支援していきたい」と述べた。
3社によるエコシステムのイメージ
浅野氏によれば、Bluewolf専門チームは数十人規模でスタートするが、グローバル・ビジネス・サービス部門を中心に体制強化を急ぐ。「Salesforceは日本市場で年30%近い成長にあり、現在のタイミングで日本にグローバルの協業体制をいち早く展開する必要がある」と話している。