この事例でのポイントはその実現方法にある。このサービスに対応するタクシーにはタブレット端末2台(乗客用・運転手用)と、カード読み取り機(電子マネーやクレジットカード払いに対応する装置)の3デバイスのみが提供されるのだが、たったそれだけで実装が完了する。
タクシーには既存の設備(電子マネーのカードリーダーなど)がそのまま残されている場合もあるがそちらは使わず、この3つのデバイスが既存のサービスを”上書き”するように存在するのである。
シンプルな発想と実装、なにより、一度このシステムに慣れてしまったら後戻りはできない「不可逆性」を感じさせるこの仕組みの裏には、デジタル人類による綿密な企みがあるように感じられるのである。
4つの事例の共通点
事例を4つ紹介したところで、これらの事例に共通するポイントを探っていきたいと思う。筆者の目からみて、この4つの事例に共通するポイント、すなわち、デジタル人類の仕業であると色濃く感じるポイントは次の3つである。
- 人の機能を拡張している
- Lose-Lose状態を解消している
- シンプルな解から提供している
では一つずつ解説していこう。
人の機能を拡張している
居酒屋の事例が最もわかりやすいが、そもそも人間の能力には必ず限界が存在し、状況を全て把握することなど不可能である。
店内の隅々まで神経を行き渡らせたり、生産ラインの稼働状況を一元的に把握したり、人々の笑顔をカウントしたり、運転中に顧客の支払いに対応したりなどは、全てIoT的・デジタル的な発想と挑戦がなければなし得ない成果である。
Lose-Lose状態を解消している
ビジネスにおいては顧客と提供者ともにWin-Winの状態であることが望ましいが、時に双方ともLose、すなわちお互いに損し合っている状態がある。
気を利かせたい店員と気が利かないことにイライラする顧客、生産ラインの状況が分からない管理者と現場業務に忙しい担当者、集客にあえぐ劇場と高い料金を払ってまでショーをみたくない顧客、面倒な支払い手続きをする運転手と顧客……といった具合だ。
紹介した4つの事例はこのようなLose-Lose状態を、1つのアイデアでWin-Winの状態に導いている点が素晴らしい。
そのアイデアの源泉はやはりIoT的・デジタル的なものであり、変化を受容する(もしくは変革者になる)覚悟があってこそ成し遂げられているのである。