制御盤を開けずにARで点検--シュナイダーが保守作業のIoT化を推進

國谷武史 (編集部)

2017-07-04 17:34

 シュナイダーエレクトリックは7月4日、システムの保守作業に拡張現実(AR)技術を利用する仕組みを国内で新たに提供すると発表した。大幅な保守作業の短縮や人的ミスの削減につながる効果が期待されるとしている。

iPadに制御盤内部のAR画像を表示した様子。タッチパネルコントローラがARサーバを兼ねる''
iPadに制御盤内部のAR画像を表示した様子。タッチパネルコントローラがARサーバを兼ねる

 同社は、この仕組みを「EcoStruxure Augmented Operator Advisor」の名称で、8月から提供する計画。制御システムのタッチパネルコントローラなどにARコンテンツの配信や端末との通信を中継するARサーバソフトを組み込み、汎用のタブレット端末のアプリケーションから操作する。コントローラとデータベースやファイルサーバ、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの既存システムと連携させることができる。

EcoStruxure
EcoStruxure Augmented Operator Advisorの基本的な構成

 提供当初の基本構成は、グループ企業のデジタル(大阪市)が開発・提供する「Pro-face HMI」とiPadを予定する。タブレット端末用アプリはAndroid版やWindows版も提供する計画。またシュナイダー製以外のPLCにも接続でき、約800種類のプロトコルに対応するという。

 同社はこの仕組みを全業種に提供するとしているが、主な想定用途に制御系システムの保守作業などを挙げる。Industry HMI LoB バイスプレジデントの石井友亜氏は、保守作業時間の50%がマニュアルなどの検索に費やされ、機器故障の50%以上が人的ミスによって発生していると話す。

 例えば、制御盤を開くと自動停止するようなシステムの保守では、作業ミスによって安定稼働に大きな支障をきたす恐れがある。新たな仕組みでは、制御盤にタブレット端末のカメラを向けることで、画面上に制御盤の内部画像を組み合わせて表示し、画面をタッチしながら操作方法のマニュアルを確認したり、作業手順を示す動画を再生したりといったことができる。事前にこうした確認を行うことで、制御盤を操作する際のミスを減らせるという。

AR画像に不具合がある内部機器の情報を重ねて表示した場合のデモ''
AR画像に不具合がある内部機器の情報を重ねて表示した場合のデモ

 導入時に、まず同社の営業担当者が顧客にヒアリングを行い、要望に基づく仕様で試験運用する。結果を踏まえて本格導入し、改良や改善を継続的に図っていくという。要望に応じて、例えば、制御室と作業現場との間で連絡するアプリケーションを追加したり、制御システムをタブレット端末から直接操作できるようにしたりできる。

 インダストリー事業部バイスプレジデントの勝村友一氏によれば、同社では1997年からウェブベースのインターフェースでシステムを遠隔から制御可能なコントローラを手掛ける。「アプリケーションやコントロール、接続先システムを包括的にカバーできるのが、当社のIoTの特徴」(勝村氏)と説明する。

 今回の仕組みは、2016年から家具メーカーのカリモク家具が総張工場(愛知県東浦町)で先行導入しており、設備停止時間が半分になるなど、一定の効果が出ているという。

先行導入しているカリモク家具でのシステム構成イメージ''
先行導入しているカリモク家具でのシステム構成イメージ

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