日本銀行は、6月に発表された決済システムレポート「モバイル決済の現状と課題」の中で、モバイル決済に関する日本・米国・ドイツの各アンケート調査の比較を行った。
その結果、日本・米国・ドイツとも共通して、「セキュリティや紛失リスクに不安」「現金やクレジットカード等他の決済手段の方が、利便性が高い」「使う必要がない」といったことが、モバイル決済を利用しない主な理由として挙げられていることが明らかになった。
携帯電話・スマートフォンの支払・決済機能を利用しない理由
各国のアンケート調査は、日銀、FRB、Bundesbankがそれぞれ個別に実施したもの。
日本では「店頭でのモバイル決済を利用しない」と答えた人のうち約半数が、その理由として、「セキュリティ・紛失時など安全性に不安がある」ことを挙げている。米国での調査結果では、個人情報のセキュリティに対する不安を表明する人も目立ち、携帯電話の保有者に対し、店頭でモバイル決済する際の個人情報の安全性に対する見方を質問したところ、約半数の人が不安を持つと回答している。
米国における店頭モバイル決済の個人情報に対する安全面での見解
さらに、同レポートでは、日本・米国・ドイツの共通点として、店頭モバイル決済を利用しない理由に、他の決済手段(現金、クレジットカード等)の方が利便性が高いといった回答が多いことを指摘している。この背景としては、モバイル決済を利用可能にする上での初期設定(アプリのダウンロードやカード情報の登録など)や、スマートフォンなどの機種変更に伴う作業(旧端末における情報の削除やサーバーへの情報の退避、新端末での再設定など)の作業を煩雑と感じる人々の存在が考えられるとしている。
日本のアンケート調査では、「支払いは現金でしたい」との回答が多い。特に、20歳代と70歳以上でその傾向が強くなっている。また、米国、ドイツでも、モバイル決済を利用しない理由として、モバイル決済を使う利点が感じられない、使う必要がないといった回答が目立っている。日銀では、先進国では、ベーシックな支払決済インフラが既に普及していることから、新たな決済手段へのニーズが直ちには強まりにくいと分析している。
携帯電話・スマートフォンの支払・決済機能を利用しない理由(日本、世代別)
日銀では、これらの結果を踏まえ、新しい支払決済手段が、既に普及している手段を凌駕して成長していくには、ユーザー側が相応の利便性を認識していく必要があるとしている。また、金融サービスのサイバーセキュリティや情報プライバシー保護面への人々の関心が強いことを挙げ、新しい決済手段に警戒する傾向があることも指摘している。