アクセンチュアは、企業の人工知能(AI)活用が進むことで、先進12カ国の16の業界で、新たに年間14兆ドルの粗付加価値(GVA)の創出が可能になるという調査レポートを発表した。また、2035年までに収益を平均38%向上できる可能性があるとしている。
GVAは、製品やサービスによって生み出される価値を示すもので、国内総生産(GDP)にほぼ相当する。対象の先進12カ国は日本、米国、フィンランド、英国、スウェーデン、オランダ、ドイツ、オーストリア、フランス、ベルギー、スペイン、イタリア。16の業界は情報通信、製造、金融サービス、卸売・小売、運輸・倉庫、専門サービス、ヘルスケア、建設、農林水産、宿泊・飲食、水道・電気・ガス、アート・エンターテインメント、福祉サービス、公共サービス、教育、その他サービスとなっている。
レポートでは、16の業界においてAI活用が進まないケースを想定した「ベースラインシナリオ」と、AIの影響力が市場に浸透した場合に期待される経済成長を示す「AIシナリオ」を設定。両シナリオにおける経済成長率を比較した。その結果、AIは2035年時点の経済成長率を加重平均で1.7%向上させる可能性があるという。
経済成長へのインパクト(2035年時点の年間GVA成長率を、ベースラインシナリオとAIシナリオで比較)
企業収益へのインパクト(ベースラインシナリオと比較した場合の、2035年時点におけるAIシナリオの利益配当金の増加率)
「ベースラインシナリオ」でのGVA成長率と比べて、「AIシナリオ」でのGVA成長率が2035年時点で特に増加する業界は、情報通信(4.8%増加)と製造(4.4%)、金融サービス(4.3%)で、「AIシナリオ」では、この3業界だけで2035年に6兆ドルのGVAが新たに生まれると予測される。
一方、生産性の伸びがもともと緩やかな労働集約型の業界においてもGVAの大幅な増加が予測されており、教育業界では1090億ドル、社会福祉業界では2160億ドルの増加が見込まれるという。
アクセンチュアでは、これらの結果を踏まえ、AIによるビジネスの成功に向けて、「経営陣がAIのメリットを確実に理解し、ロードマップを描くこと」「従業員と機械のインタラクション管理に対する責任」「人間と機械の連携によるリスクを最小化するための企業文化と指針の策定」「データのクラウド統合」「オートメーションの高度化」などが今後必要になるとしている。