空き家をサテライトオフィスにした鯖江市--人口増に転じ地方創生の成功例に - (page 2)

大河原克行

2017-07-18 11:11

 鯖江市内には約1000軒の空き家があると見られており、これらの空き家を有効活用することで、多くの企業が利用できるようにする。

 「鯖江市は、めがね、繊維、漆器という3つの産業を持ち、4番目の産業としてITのまちづくりに取り組んでいる。全国に先駆けて、行政情報のオープンデータ化に取り組むなど、高い関心を集めており、鯖江市の認知度は71.3%と高く、2014年に比べても7.6ポイントも上昇している。こうした成果が、サテライトオフィス事業の募集にもプラスに働いている」とした。

 市街部オフィスだけでなく、山間部オフィスにおいても、光回線が到達しており、安定した高速ネットワーク環境を整備している点も、サラテイトオフィスを利用する企業にとってはプラスになっている。

 鯖江市では、サテライトオフィス事業を通じて、「空き家、空き室」問題への対応のほか、進出企業と市内企業との新たなビジネスマッチングの創出、進出企業による雇用促進および人材確保を期待しているという。


市街部オフィスの様子

 牧野市長は、「空き家をサテライトオフィスとして活用した誘致に向けた取り組みを加速したい」と意気込んでいる。

 実は、鯖江市では、今年4月1日時点での人口が増加したという。「4月は大学や就職によって若者が首都圏に行ってしまうため、このタイミングは、常に人口が減少していたが、初めてこれが止まり、増加に転じた。市内の企業に就職したり、Uターンで戻ってくる若い人たちが増加したことが要因だろう。だが、市内の有効求人倍率は2.05倍となっているものの、働く人が少なく、ミスマッチの部分もある。サテライトオフィス事業によって、クリエイティブ系の新たな企業が鯖江市内に増加することで、若い人たちの雇用の機会を作り、さらに多くの人が鯖江市で働き、鯖江市に戻ってくることを期待したい。自治体の活性化の鍵は若い人になる。サテライトオフィス事業において、鯖江モデルともいえる仕組みを作ることで鯖江市を盛り立てたい」と述べた。

 一方で、デルでは、働き方を7つのメソッドに分類。それぞれに最適な製品提案を行っているが、今回の鯖江市のお試しサテライトオフィスの取り組みでは、「デルが提案する働き方改革に対するコンセプトや、7つのメソッドが、鯖江市の取り組みに合致している。さらに、デルにとってもビジネスチャンスが生まれると考えている」(デル 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏)と、今回の支援の狙いを説明する。


鯖江市役所の牧野百男市長とデル 常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部長の山田千代子氏

 デルでは、同社の経験や約1000社への調査をもとに、部署や業務ではなく、働き方をベースに、「社内移動型」「デスク型」「外勤型」「在宅型」「クリエイティブ型」「エンジニア型」「現場作業型」の7つの働き方に分類。それぞれに最適なハードウェアや周辺機器、サービス、セキュリティの組み合わせを提案している。

 「同じ内勤者でも、机の前にずっと座って作業をする社員と、会議から会議へと社内を動きまわることが多い社員では、必要とされるPCのスペックが異なる。社員がどのように働いているのかを見極め、それぞれにあわせたデバイスを選ぶことが大切である」(同)とする。



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