内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

IT部門人材とイノベーションの相性

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2017-07-12 08:39

 前回は「イノベーションに求められる人材像」について述べました。そこからは、これまでのIT部門の人材に不足するスキルや特性も浮かび上がってきました。では、IT部門の人材がそのような特性を身につけることはできるのでしょうか。

仕事と人材の相性

 特定の仕事に求める人材の要件を考えるとき、スキルも重要な要素ではありますが、スタンスやマインドの方がその相性を左右することは珍しくありません。スキルは必要に応じて学ぶなどして身につけることができますが、スタンスやマインドは知らず知らずのうちにしみついていたりして、なかなか変えられないことがあるためです。

 IT部門のスタッフがイノベーション創出の役割を担おうとした場合、あるいは、イノベーション創出ができるような人材を育成しようとした場合、スキルの面よりもスタンスやマインドを変革することが重要であると同時に、困難なことではないでしょうか。

 イノベーション案件の多くは、最初から明確なシステム要件が決まっているわけではありませんし、仮説を検証しながら軌道修正を繰り返していくことが求められますので、アジャイル的にプロジェクトを推進するスキルが必要となります。また、アイデアを生み出したり、モデル化するには情報システム関連のスキルだけではなく、デザイン思考や未来視点で仮説を設定するスキルを必要としたりします。

 こうしたスキルは、IT部門人材にとって未開拓な領域であるため、学ばなければならないことは多いと思います。しかし、それらはしっかりと学べばよいですし、少なくとも一定レベルのIT技術者であれば、それらを身につける基本的な素養(論理思考や構造表現のスキル)は持っていると思います。

「エンタープライズ系」と「シブヤ系」

 さて、スタンスやマインドについてはどうでしょうか。ここで、IT人材を「エンタープライズ系」と「シブヤ系」の2つのタイプに分けて考えてみましょう。人の性質や特徴をステレオタイプに2つに分けて考えるのは少し乱暴なことは承知しているのですが、ここではあえて違いをはっきりさせるためにそうしてみます。

 エンタープライズ系は、言うまでもなく社内の情報システムを、安全・確実に開発・運用してきたIT部門の人材を、シブヤ系というのは、音楽やファッションの分野の話ではなく、一時期ビットバレーと呼ばれた渋谷に集まったITベンチャーを象徴的に表現したもので、ウェブアプリやスマホアプリの開発やネット企業のIT技術者をイメージした呼び方です。

 エンタープライズ系とシブヤ系、その特徴を表にまとめてみました(図1)。


図1:エンタープライズ系IT人材とシブヤ系IT人材

求められるエンタープライズのわかるシブヤ系

 図1では、エンタープライズ系とシブヤ系のIT人材のそれぞれの良い点および改善すべき点をあえて特徴的に表現しています。こうした特徴は、スキルというよりもむしろスタンスやマインドにおける違いに大きく起因しているといえます。

 もちろん、すべてのIT技術者がこの2つのパターンにきれいに分類されるということはありません。しかし、昨今のデジタライゼーションの潮流に対応していくためには、エンタープライズ系だけでなく、シブヤ系人材の特徴的要素を取り入れていかなければならないと思います。

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