米Microsoftは7月9日から13日まで、米国ワシントンD.C.で、パートナー向けカンファレンス「Inspire 2017」を開催している。2016年まで「Microsoft Worldwide Partner Conference」として実施していたもの。Microsoft製品の販売パートナーを対象としている点は変わらないが、エンドユーザー視点でメッセージを展開しようとしている。
世界からの参加者は1万7000人。日本からは150社、450人が現地を訪れている。Inspireを受けて、日本でも9月1日にパートナー向けのカンファレンスを開催する予定だ。
米国時間の7月9日、初日のキーノートには最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏が登壇。「Linux、Hadoop、JavaなどさまざまなエコシステムがMicrosoftに合流しており、われわれはそれを歓迎している。それこそがMicrosoftを形作っている」と切り出した。 オープンソースをはじめ、従来手を組まなかったコミュニティとの協業を強力に進めていく、というCEOとしてのNadella氏のこだわりが表れている。
初日のキーノートに登壇した最高経営責任者(CEO)のSatya Nadella氏
Microsoftは1年前に、クラウドサービス群を組み合わせた「Secure Productive Enterprise」を発表した。Nadella氏は今年、その後継のバンドルを披露し、名称を「Microsoft 365」に変更すると発表した。
「世界スケールで考え、顧客の成功にコミットしている。だからエコシステムが成功している。パートナーありきの企業であることが、われわれの根幹にある」(Nadella氏)
パートナーへのメッセージとして、(1)Microsoft自身がチャネルマネージャーとしてパートナーと顧客をつなぐ、(2)Azureベースで収益を上げていく、(3)新しいセールスインセンティブによる付加価値の10%をパートナーソリューションで上げる――の3つを挙げている。
Nadella氏は、今後の事業展開をしていく上で注目している3つのシフトとして「インテリジェントシフト」「人工知能(AI)」「サーバレス」を挙げた。
インテリジェントシフトはモバイルを含めてデバイスにとらわれない環境を、AIでは1秒あたり4Gバイトのデータが生まれるという自動運転車やスマートファクトリを引き合いに出す。雲ではなく現場、すなわちエッジ側で大量のデータが生まれてくることを重視し、それをAIが分析して新たなアプリケーションの生成を促していく。
その効率の良いアプリケーション構築の基盤の1つが、アクションが必要な時のみ立ち上がり、データ処理などを実施できるサーバレスアーキテクチャだと説明している。
モダンワークプレイスで働き方改革
注力する技術的な側面に触れた上で、Nadella氏は「モダンワークプレイス」という言葉を用い、今後の働く環境を提案した。政府が推進する「働き方改革」をサポートしている日本市場への展開という意味でも、親和性がある。
「モダンワークプレイスでは、従業員をエンパワーすることによって企業文化のシフトを起こせる。それは変革の第一歩だ」(Nadella氏)
人口動態の変化、スキルのシフト、チームのまとまり方の変容――それがモダンワークプレイスの変化につながると指摘。
個人の生産性にとどまらず、洞察をどう生かせるか、そのためのツールをどう使うか、階層構造の組織をどう捉えてチームとしてもっと動的にものを作るか、1つの枠組みの中にどう取り込んでいくかといった問題意識があることに、Nadella氏は触れている。