産学連携の新世紀

“指”の認証がインフラになる--国内外の銀行との連携が進むLiquid

飯田樹

2017-07-13 07:00

 本連載では、テクノロジとアカデミア、ビジネスの関係を解き明かすことをテーマに、「産」「学」「官」のさまざまなアクターに取材をしている。今回は、生体認証・空間認識エンジン「LIQUID」の研究・開発を行なっているLiquidの代表取締役 久田康弘氏と、第一営業部長 佐藤毅氏に話を聞いた。

--まずは御社のビジョンをお聞かせください。


Liquidの代表取締役 久田康弘氏

 久田氏:本人であることが本人を証明する手段になるという、当たり前の世界を作ることがLiquidのビジョンです。また、新しい世界の認証インフラを構築することで、次世代の生活にとっての"当たり前"を支える事業を展開したいと思っています。

 本人認証技術は世の中の全てのサービスを受ける前提となる技術ですが、2014年1月以降だけでも、日本、米国で8000万件を超えるクレジットカードの不正利用や個人情報の流失など、既存の認証手段の脆弱性に起因する事件が起きています。このような環境下で、悪意ある人間が偽造するにはコストが高く、ユーザーにとっては利便性が高い当社の生体認証技術を普及させることで、生活のインフラを支えるサービスを生み出します。

--設立の経緯は。

 久田氏:もともとは画像解析エンジンを開発するためのベンチャー企業であり、その用途の1つとして生体認証を手がけたところで、Liquidが誕生しました。

 YouTubeやInstagramの人気が出始めていた頃に、「これからは人間がテキストを打って検索するのではなく、センサを利用して対象を測定するセンシングや、動画から情報を探し出すような技術が求められる時代になる」という意見がメンバーから出たのです。同時に、人工知能ブームとしてマシンラーニング、ディープラーニングなどが注目を浴び始めたことを受けて、これからは画像の時代になるという見通しが立ち、画像解析エンジンの会社を作ることが具体化したのです。

--慶應義塾大学大学院の研究室と共同研究をされているそうですが、その経緯は。

 佐藤氏:画像動画解析技術には、学術的な部分が必要です。大学院にある研究室がこの分野で有名だったことから、久田の人脈を通してつながりました。人の交流に関しては、週1日は大学で准教授をやり、週4日はLiquidに来るなど、学術的な部分をリアルビジネスの場に落とし込む人もいます。

--研究室での研究と企業での研究には違いがあると思いますが、共同研究が上手く進んでいる理由はどこにありますか。

 佐藤氏: 私は理系出身ですが、共同研究には、個別に研究することとは別のおもしろさがあると思っています。論文上でも数理形式を組んだりモデルを作り上げることはできますが、ビジネスでそのまま使うことはできません。

 そのため、ビジネスの場でどんなマイナーチェンジやモデルチェンジをしていくのかは、理系人としては面白いところです。そういう知見を持った研究室の個々人に協力してもらっています。

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