現在、新しく立ち上がっているのがLIQUID KEY(生体認証によるスマートドア)のプロジェクトです。最初の段階として、オフィスやホテルの入退室を生体認証で行えるようにすることを目指しています。
次の段階ではLIQUID Payと連携し、オフィスやホテル内のコンビニなどへ財布を持っていかなくて済む環境を作り、さらに次の段階としては、空間認識の技術を使って、ビル内の空いている店舗にクーポンを発行するといったサービス提供も目指しています。最終的には街単位に広げて提供したいですし、オフィスに関しては、導入予定の企業もあります。
--他企業や政府との事例が多く、分野も幅広いのはなぜですか。
佐藤氏:最終的に全てを指だけでできるようにしたいからです。外国人観光客なら入国審査やチェックイン、移動、観光、住んでいる人なら、買い物や役所への申請、病院の全てを指紋のプラットフォームで可能にしたいのです。そのためには、Liquidだけではできないことが多々あるので、民間企業や政府と一緒にシナジーを産みたいと考えています。
現時点で目指していることは2つです。1つは本人のみで本人確認ができるようにすること。今、クレジットカードや携帯電話を申し込むときには、保険証や運転免許証を提示し、さらに転送不要郵便で自宅まで郵送する必要がありますが、これらの書類を忘れたら本人であると証明できません。
もう一つは、安全性と利便性の両立です。世の中で利便性を担保するためには、クレジットカードやポイントカード、キャッシュカードなどを持つ必要がありますが、たくさん持つほど1枚1枚の紛失リスクが高くなります。
それらを偽造不可能な生体認証に集約して、安全性と利便性を担保できる世界をつくりたいと考えています。それが、IoP (Internet of Person)の社会です。
今はIoTが流行っていますが、次世代として、人と直接サービスやインターネットが繋がる世界を作っていきたいという最終目標があります。全分野に浸透していかないと、「生体認証のみで」ということは実現できないので、多くの分野に認証プラットフォームを提供しているのです。
<同社が目指している「IoP(Internet of Person)」の世界(「FinTechにおける生体認証とセキュリティについて」より)>
--他企業との連携では、形になるまで時間がかかったり、すり合わせが困難になったりする事例もあるようですね。
佐藤氏:株主や共同研究パートナーには、5~10年という長い目で認証技術でインフラを変えていくというわれわれの思想に賛同してもらっています。今までの指紋認証技術は逐次検索(総当り検索)でしたが、われわれは機械学習を使いながら認証しています。現状では、100万人のデータ数なら、検索だけなら0.3秒で検索が終わります。生体認証での高速認証をもって、こういう世界を実現したいと考えているわけです。