Adwindのアクティビティが急激に伸びていることは、サイバー犯罪者らがダークウェブで販売されている「サービスとしてのマルウェア」を積極的に利用し、攻撃を展開していることを示唆している。Kaspersky Labの推定によると、Adwindのユーザー数は少なくとも1800人となっており、そのサブスクリプション料金だけで開発者らに年間20万ドル以上の収入をもたらしているという。
Adwindが特に危険視されているのは、このマルウェアがほとんどのOSを標的にできるためだ。というのもこれは、Javaがインストールされているマシンであれば、WindowsやMac OS X、Linux、Androidのいずれでも動作する、クロスプラットフォーム対応のトロイの木馬であるためだ。つまり、獲物には事欠かないというわけだ。
Adwindを用いたこの最新のスパムキャンペーンでは、フィッシングメールとソーシャルエンジニアリングの手法を使って被害者に悪意のあるリンクをクリックさせようとする。メッセージの差出人は「Mediterranean Yacht Broker Association Charter Committee」(地中海ヨット仲介協会のチャーター委員会)とされ、宛先のユーザーに対して、チャーター規約に関する緊急の変更項目を確認するためのリンクをクリックさせようとする。なお、差出人のアドレスも詐称されており、メッセージの正当性を醸し出すようになっている。

Adwindを送り込むために用いられた悪意のあるスパムメール
提供:Trend Micro
悪意を持ったURLをクリックすると、リモートアクセス型のトロイの木馬であるAdwindを被害者のマシンに感染させるためのプログラム情報ファイル(PIF)が送り込まれる。その結果、マシンに格納されている、あるいはマシンがアクセスする機密データはハッカーの元に送信されるようになる。
Trend Microの脅威アナリストらによると、この種の攻撃に用いられるソーシャルエンジニアリングからユーザーを守るためには、サイバーセキュリティを意識する文化の醸成がベストプラクティスの一つになるという。
今回のキャンペーンでは航空宇宙産業に的が絞られているとはいえ、Adwindはその登場以来、教育業界やヘルスケア業界、政府機関、通信業界のほか、個人までをも対象とする数多くの攻撃に用いられてきている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。