機械学習など人工知能(AI)の進展と普及により、経済や産業へのインパクトが期待されている中、雇用への置き換えにも不安視がされている。今回、AIの経済や産業へのインパクトや、雇用などさまざまな調査データを参考にしながら、今後のAI時代のビジネス社会について整理する。
アクセンチュアは7月5日、AIの利益とイノベーションに関するレポートの調査結果(日本語版)を公表した(英文レポート)。
この調査によると、企業はAIの活用により、2035年までに収益が平均で38%向上し、先進12カ国、16業界では、新たに年間14兆ドルの粗付加価値(製品・サービスによって生み出される価値を示すGDPに近い:GVA)の創出が可能と予測している。
AIが経済に与える潜在的なインパクトをGVAに基づいて算出し、16の業界でAI活用が進まないケースを想定した「ベースラインシナリオ」と、AIの影響力が市場に浸透した場合の成長を示す「AIシナリオ」で経済成長率を比較している。
2035年時点の「AIシナリオ」成長率が、「ベースラインシナリオ」成長率と比べて、特に増加する業界は、情報通信(4.8%増)と製造(4.4%増)、金融サービス(4.3%増)と、この3業界だけで2035年に6兆ドルのGVAが新たに生まれると予測している。
2035年時点の年間GVA成長率を、ベースラインシナリオとAIシナリオで比較
出所:アクセンチュア 2017.7
労働集約型の業界でもGVAの大幅な増加が予測され、教育業界では1090億ドル、社会福祉業界では2160億ドルの増加が見込まれるという。
AIはそれぞれの業界で大幅な増収の機会をもたらし、卸売業や小売業などの労働集約型の業界では、AIが人間の労働力を補うことで生産性が高まり、2035年には60%近い増収が可能と予測している。
製造業などの資本集約型の業界でも、機械にAIが組み込まれることで誤作動やダウンタイムが減り、常に高い利益率を確保が可能になり、2035年には39%の増収が可能になるとも予測している。
ベースラインシナリオと比較した場合の、2035年時点におけるAIシナリオの利益配当金の増加率
出所:アクセンチュア 2017.7