プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が2016年6月に発表した調査では、AIが2030年までに世界経済に最大15兆7000億ドル(約1780兆円)規模の経済的なインパクトをもたらすと予測している。
内訳は、企業が新たなAI技術を使ってプロセスの自動化と労働力強化による生産性向上で6兆6000億ドル、消費者がより個別ニーズに合った品質の高い商品を購入する効果で9兆1000億ドルとしている。
アクセンチュアやPwCからの予測にもあるように、AIはさまざまな業種や業態で、生産性向上や付加価値創出、経済的なインパクトが期待されている。
AIによる世界経済の規模拡大が予想される中で重要となるのが、各企業におけるAIを活用した事業戦略とビジネスへの活用だ。
Gartnerが5月に発表した調査によると、AIがビジネス戦略と雇用に及ぼす影響が進む中で、企業のCIOはこれらの影響に対しての備えが重要であると指摘している。
AIや機械学習は多くの業務に活用されるようになり、これまでの専門家の領域が低コストのコモディティの領域となる。これにより、2022年までに医師や法律家やITなど高度に訓練された専門家は、自律的に行動する電子機械である「スマートマシン」とロボットに置き換えられると予測している。
AIは、さまざまな産業に影響を与え、企業の事業戦略の策定において関与するようになり、競争力のある高収益をもたらす産業の複雑なプロセスを、電気のようなコモディティ化されたサービスモデルに変化できるという。
AIに置き換わる職種の例の中で、金融分野では融資や保険請求の調整などの業務の自動化が可能になる。金融サービスのレベルを向上するとともに、人間自身がより付加価値の高い業務にチャレンジできる環境にシフトできる点を紹介している。
AIへの期待値が多い中で、雇用への不安も多い。ARMは7月、AIに関する意識調査を実施した。
今回の調査結果によると、63%の人が「AI技術によって世界はより良いものになる」回答している。その一方で雇用への不安に関しては、最も多かったのが将来の雇用喪失で、回答者の30%がAIの普及により、「人々の仕事が減る、もしくは変わる」と回答している。最も影響を受ける可能性の高い職種は「重機建設」「宅配」「公共交通」などが挙がった。一方、人間が今後も活躍できるのは、調理や消防、農業などの分野で、AIやロボットが人間の仕事を奪うものではなく、仕事の効率を高めるという。
AIやロボットによって、仕事が置き換えられる可能性は、教育過程によってもその差が顕著となる。Institute for Spatial Economic Analysis(ISEA)の6月の発表によると、高卒の資格を持たない人は、博士号の資格を持っている人と比較して、あまり複雑ではなく、自動化が容易な職種についていることが多いため、仕事を奪われるリスクが約6倍高いという。

教育過程別の仕事の自動化の可能性
出所:Institute for Spatial Economic Analysis 2017.6.26