訪日外国人旅行者4000万人計画を支援するドイツSAPの狙い - (page 2)

田中克己

2017-07-21 07:30

 そのきっかけは、2017年3月にドイツ・ハノーバーで開催された国際情報通信技術見本市CeBITで、世耕経済産業大臣がドイツのツィプリス経済エネルギー大臣と第4次産業革命に関する協力の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」に署名したこと。簡単にいえば、日本がドイツとIoTの連携強化を図ること。

 その中核となるIndustrie 4.0を推進するリーダーであるSAPは、絶好のチャンスととらえて、日本におけるデジタル政府など公共事業のIT化支援に本格的に取り組む。7月1日に公共統括本部を新設し、欧米やアジアにおけるデジタル政府など公共システムの成功事例を提案する。本社など海外や外部から有能な人材を招聘し、日本法人を含めた15人を配置した。市場拡大とともに、陣容を拡充する。

 具体的な提案は、デザイン・シンキングによって、明らかになる社会課題を解決するソリューションになる。IoT活用の知見も生かす。「国民が個々人の状況に応じたきめ細やかなサービスを利便性高く享受する社会の実現に向けて、諸外国政府に対するクラウドサービスやIoTによるデジタル改革、ビッグデータ分析の豊富な知見を活かして、官民データ連携の強化(行政サービスと民間サービスの効果的な連携)や業務プロセス見直しまで踏み込んだ行政事務の適正化・効率化などを支援する」(広報)ことを考えている。

 例えば、豪雨などによる地盤の変動、河川の数位などを3万の下水溝センサで検知、予測するアルゼンチンのブエノスアイレス市や、IoT活用で物流量の効率化を図り、現状設備で対応可能にするドイツのハンブルク港湾局など、公共事例は151国にある。

 官公庁や地方自治体など公共機関のデジタル化は大きく遅れていると言われている。世界に追いつく有効な方法は、先進事例を持つ海外IT企業に頼ることだろう。そして、開拓を早めるには、ERPなどの販売代理店になっている富士通やNECなどを活用する。彼らの優良顧客でもあるからだ。公共統括本部長にパートナービジネスを長年担当した佐藤知成氏を就けたSAPは、そんなことは分かっていることだろう。次の一手に注目する。

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