Microsoftは、「人工知能」(AI)という曖昧な定義を持つ一連の技術を、製品やサービスに組み込むことに力を入れている。同社が、最大で7500人の従業員が属する「AI and Research」部門を立ち上げたことが、その証明だと言えるだろう。
同社の研究者が業界のカンファレンスや社内の会合でのお披露目に値すると考えているプロジェクトがどのようなものかを知ることやはり興味深い。多くの場合、Microsoftが次に商用化しようとしている技術を推測するための手がかりになる。
同社が力を入れている分野の1つが、マシンリーディングだ。これは、システムに自動的にテキストの内容を理解させる技術を指す。ワシントン州レドモンドでMicrosoftが開催した「Faculty Research Summit」では、Microsoftがこの分野で進めている取り組みのヒントが見えた。
米国時間7月17日、2人のMicrosoftの研究者が、機械学習について発表を行った。その1人は、パートナーリサーチマネージャーのJianfeng Gao氏で、「ReasoNet」と呼ばれる、Microsoftが投資している新たなニューラルネットワークアーキテクチャについての論文の著者の1人だ。
ReasoNet(「Reasoning Network」:推論ネットワークの略)は、機械による文章理解を目的としている。8月に開催される学会「SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining」で発表予定の論文の概要によれば、「ReasoNetは複数のターンを用いて、クエリ、文書、回答の間にある関係性を効果的に利用し、その関係性に関する推論を行う」という。
ReasoNetのモデルは、文章を読む際の人間の推定プロセスを模倣することを目的として作られている。Microsoftの研究ウェブサイトによれば、同社はこのモデルの共用メモリコンポーネントを「Knowledge Graph Completion Task」(知識グラフ補完タスク)に応用している。同研究チームはまた、「SynNet」と名付けられた機械による意味の理解に関する転移学習のための2段階技術を開発した。SynNetも、9月に開催される学会で発表予定の研究論文のテーマになっている。
ReasoNetは、レドモンドにあるMicrosoft Researchのディープラーニンググループで進められているプロジェクトだ。同社が2016年9月に設立した「Deep Learning for Machine Comprehension」プロジェクトは、コンピュータに対して、文章を読み、その文章に関する一般的な質問に答える方法を教えることを目的としている。
Microsoftが2017年1月にディープラーニングを専門とするスタートアップMaluubaの買収を発表したことも、同社がマシンリーディングに力を入れていることに大きく影響している。
Maluubaは、機械が「意味を理解し、推論を行い、人間とコミュニケーションできるようにする」ことを目指して活動しているという。このスタートアップは、機械が情報を探し、文章を読み、推論できるようにするための新たなトレーニング方法に取り組んできた。また、機械が質問するためのトレーニング方法も模索している。