安全なIoTプラットフォームの実現を目指す「セキュアIoTプラットフォーム協議会」が設立され、都内で7月20日、設立総会が開催された。日本の産業界の知見を集め、安全なIoTプラットフォームを世界に発信することを目標に掲げる。
同協議会は、安全なIoTプラットフォーム標準の規格化やその普及と、IoT活用の実証実験、最新のIoT情報の発信などを行う。半導体メーカーやIoT機器メーカー、ITベンダーなど約30の企業・組織が参画している。
総会であいさつに立った理事長の辻井重男氏(中央大学研究開発機構フェロー、東京工業大学名誉教授)は、IoTがテクノロジのバズワードではなく、新しい時代を切り開く存在であり、IoTが社会に安心や自由などをもたらすものとなるよう取り組むとの方針を表明した。

都内で開催された「セキュアIoTプラットフォーム協議会」の設立総会
記念講演では、KDDI総合研究所 取締役副所長 セキュリティ部門長の田中俊昭氏が、次世代無線技術の5GとIoTのセキュリティ動向をテーマに解説した。田中氏によれば、世界のモバイルトラフィックは2020年までに年平均53%の増加が予想され、IoTがそのリード役になるとみられている。
5Gは、「超高速通信」「多数機器間通信」「高信頼・低遅延」を目標に実用化が進められている。セキュリティに関する詳細な検討はこれからだが、(1)セキュアなアーキテクチャ、(2)強固なネットワーク、(3)仮想化セキュリティ、(4)ID管理、(5)セキュリティの省電力化、(6)セキュリティ評価――が論点になるという。
一方でIoTは、さまざまな種類の膨大な数の機器が世界中に存在する。田中氏は、今後登場する5Gとは異なる状況であることを前提に、IoTのセキュリティを考える必要性を指摘する。2016年秋には、「Mirai」と呼ばれるマルウェアに感染したIoT機器のボットネットが大規模な分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を発生させるなど、既に脅威が顕在化している。
現状におけるセキュリティ対策としては、リソースに制約のあるデバイス側というより、トラフィックのゲートウェイやデータセンター側での監視や防御などが有力であり、将来的にデバイス側でもハードウェアを安全にしていくことが求められるという。また、IoTのシステムが10年単位で長期運用される点にも留意すべきだとした。
5Gは、IoTの発する膨大なトラフィックを扱うインフラの一部として重要な役割を果たし、セキュリティに関しては、ID管理や省電力化、機器の安全性評価といった要素が5GとIoTに共通して取り組めるポイントになるという。
最後に田中氏は、IoTのセキュリティをハードウェアとソフトウェアの両面から高めていくべきとし、安全なIoTプラットフォームが世界における日本の競争力になるだろうと話した。