サンフランシスコで開催された同社の開発者向け年次イベント「TrailheaDX」の参加者らがこういった顧客の典型だというのであれば、同社は既に溝を埋めたと言えるだろう。しかもそれは、たった1つの流れではない。従来の開発者はSalesforceのAPIを使ってアプリを開発しており(APIトランザクションの過半数は、同社のSaaSプラットフォーム以外で生成されている)、Salesforceの管理者はTrailheadを利用してLightningのスキル身につけ、Salesforce独自のスクリプティングプラットフォームの使い方を学んでいる。
HerokuはSalesforceの開発モデルにおける中核にあたり、そのツール環境は同社の新しい「Salesforce DX」プラットフォームの基盤となっている。2016年に発表されたSalesforce DXは現在、同社の全顧客に対してパブリックベータ版が提供されている。Salesforce DXは、近代的なコードファースト開発およびDevOpsプロセスを念頭に置いており、同社のウェブベースおよび「Eclipse」ベースのツール環境と、顧客自身が好む一連のツールを統合できるという製品だ。
Salesforceにおける優先順位の変更によって生じた最大の変化はおそらく、同社の開発モデルの根幹の1つに対するものだろう。これまで、コードはSalesforceプラットフォームの外に出ることがなかった。もちろん、好きなエディタを使ったプロシージャや「Apex」コードの記述は今までも可能だったが、作業の多くは同社のクラウドサービス内で行う必要があり、テーブル定義やワークフローのエクスポートや管理はできなかった。すべてはSalesforce内で完結し、「org」内に配備したうえで、ウェブから使用するようになっていた。
しかし、Salesforce DXの登場によって状況は一変する。新たなコマンドラインインターフェース(CLI)によって、ユーザーの選んだツール環境を用いるために必要となるツールが使用できるようになり、Salesforce orgから詳細を取得して、ユーザーの選んだ継続的インテグレーションのパイプラインに投入できるようにもなる。また、新たなコード開発プラットフォームである「scratch org」を迅速に配備する新ツールも用意され、本番移行までコードを他のSalesforce配備から隔離しておけるようにもなる。