トヨタの取り組み--コネクティッドカーによる「安全快適社会」実現と新ビジネス創出基盤 - (page 2)

大西高弘 (NO BUDGET)

2017-07-31 07:30

リアルタイム性を重視したコネクティッドカーからの情報提供

 DCMを搭載したコネクティッドカーは、情報を受け入れるだけでなく、位置、走行状態、車両状態などのデータを発信することで、クルマ社会だけでなく、社会全体に大きな影響を与える存在になりうる。

 キーワードは「リアルタイム性」だ。社外の様子を撮影できるカメラを数台搭載したコネクティッドカーが多数公道などを走るようになれば、災害時や悪天候時の道路や周辺の状況をリアルにとらえることも可能になる。また、走行している場所やユーザーの運転履歴、また他のドライバーの走行履歴から、カーナビに行先を登録しなくても適切な支援を行う「先読み情報案内」も可能になる。

 こうしたサービスの精度を上げていくには、コネクティッドカーそのものの数を増やしていくことも必要だが、データの処理能力の向上も欠かせなくなる。

 「例えば『近くのイタリアンの店はどこ?』というユーザーの問いかけに適切に対応できるエージェント機能を構築するには、位置情報と店の地図情報、さらにはユーザーの好みに合わせることのできるデータなどを段階的に、素早く解析していく必要がある。『先読み情報案内』も同様で、コネクティッドカーが増加すると利用できるデータは指数関数的に増えていくので、それを適正に処理できるデータセンターの構築が必要になってくる」(谷口氏)

サービスが多様化、拡大することによるデータの増大

 現在、トヨタではコネクティッドカーに関するデータ処理を自社の「スマートセンター」で実施しているが、今後のコネクティッドカーの増加を見越して、新世代のスマートセンターの構築を検討している。

 「現在は、1台当たり月間数10メガバイト分のデータを数十万台分処理できるようになっている。しかし、2025年ころには、1台当たりの月間のデータ量は数100メガバイト分に増え、台数もグローバルで数千万台に達する見込みだ。しかも、それだけのデータ量を数秒単位で処理する必要が出てくる」と谷口氏は語る。



コネクティッドカーによるデータ量予測と次世代スマートセンターに求められる要件

 このような規模拡大に対して、谷口氏は次のように取り組みの方針を持っているという。

 「まず、一気に増加分を見越して構築するのではなく、技術の進化を見込んで段階的に拡張していく。さらに、ソフトウェア処理の最適化を行うことで負荷軽減を図っていくと同時に、分散処理によるコスト低減を目指す。また、すべてのデータを蓄積するのではなく、処理方針を明確にして必要なものだけを残すようにする」

 谷口氏によれば、数千万台分の車両走行データを数年間にわたってすべて蓄積していくと、大型のビルほどの規模が必要になってくるという。

 1台当たりのデータが増加するのは、サービスの拡大が予想されるからだ。現在は、車両自体の状態データや数10種類のセンサデータなどが主なものだが、サービスが拡大するにつれ、センサデータは数百種類に膨らむことが見込まれ、また、画像データや地図データ、個人の行動履歴データも加わり、これらが時間の経過とともに増加していく。


次世代スマートセンターの全体像

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