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「ライバルは紙」--米DocuSign会長が提案する新たなペーパーレス - (page 2)

吉澤亨史

2017-08-10 11:35

 具体的な事例としては、米国の携帯電話レンタル会社であるT-Mobileでは、3000店舗にDocuSignを導入した結果、6億枚に相当する用紙を削減し、1億9400万ドルの増益を上げました。また、レンタル契約時の書類署名やその登録にかかる時間の削減では60分から15分に短縮しています。

 このようにDocuSignが価値を提供することが触媒となり、いろいろな企業、政府、国家のさまざまなデジタルトランスフォーメーションを推進できると考えています。人工知能(AI)の時代、ビッグデータの時代、IoTの時代になって消費される紙はどんどん減っていきますが、DocuSignはその最初のステップを進めます。

 なぜDocuSignがデジタルトランスフォーメーションの触媒たり得るかというと、ROIの向上や素晴らしい価値の提供に加えて、結果を出すまでの期間がとても短いということがあるためです。例えば、ERPを実装しようとすると、数カ月から数期、場合によっては年単位の時間がかかります。DocuSignは数日で結果を出すことができます。これは驚異的な時間短縮と言えるでしょう。

 また、SAPやSalesForce、Google Docsといった既存の大手ソフトウェアプラットフォームと統合することがとても重要と考えており、DocuSignサービスは既にこれらに対応しています。DocuSignのサービスの特徴としてAPIがあります。ワールドAPIカンファレンスでは、「ナンバーワンのAPIカンパニー」と認められており、Microsoft、Salesforce.com、Uber、SAP、Visa、Concast、米国の不動産企業、FedEx、スペインの銀行BBVA、Deutsche Telekom、TELSTRA、シンガポール経済開発庁(RDB Singapore)、日本の企業ではNTT、三井、リクルートといった非常に大きな力を持つ大手企業から出資いただいています。

ZDNet: キースさんがDocuSignを指揮するに至るまでの経緯を教えてください。

キース氏: 大学で工学学位やMBAを取得した後、General Motors(GM)に入社し、26歳で過去最年少のVPとなりました。そして複数のジョイントベンチャーの立ち上げなどに携わり、Aribaでは会長兼最高経営責任者(CEO)として7年勤務、史上最も急成長を遂げた企業のひとつとなりました。DocuSignでは、兼任を含み会長として8年、CEOとして6年間務めています。

ZDNet: 日本法人を2015年に設立していますが、日本市場への参入で意識したことはありますか。

Krach氏 日本市場への参入については、3年の準備期間を用意して研究を重ねました。日本の文化や伝統を尊重した、きちんとした会社であることを印象づけたかったためです。そのため、先進国での参入は日本が最後になりました。その研究の中で、ハンコについて学びました。ハンコは1000年を超える歴史と伝統を持った日本文化の一部で、個人のアイデンティティも表すシンボルでもあります。そういう重要なものであることも学んだのです。

 だからこそ私たちは、シャチハタとパートナーシップを組みました。シャチハタからは、「これまでの押印という習慣がセキュリティ、スピード、効率、あらゆる面において電子ハンコに取って代わられつつある」という話を聞きました。DocuSignの仕組みを使って、未来のオフィスに取り組んだある企業の最高経営責任者(CEO)は、ペーパーレス化によって半年で袖机、キャビネット、引き出しも含めて60トンの軽量化に成功したと言っていました。

小枝氏: その方は、「セキュリティインシデントは必ずマニュアルなどの紙から起こる。テクノロジからは起こらない」と言いました。そのためにDocuSignを使ってペーパーレス化をすることで、セキュリティの強化に取り組んでいるとのことでした。


キース・クラック氏と、日本法人であるドキュサイン・ジャパンの代表取締役 兼 米国本社バイスプレジデントである小枝逸人氏

Krach氏: 先日も内閣府の平副大臣とお会いしましたが、国交省をはじめさまざまな政府機関の方々からサポートやアドバイスをいただいています。彼らからは、「日本はグローバルなビジネス・取引を行う方々が集う国なので、グローバルなプラットフォームが必要です。そこにDocuSignの存在はとても戦略的である。ぜひ世界で経験したベストプラクティスを供与してほしい」と依頼されました。

 また、「DocuSignの銀行、製薬、製造、保険などさまざま業界での事例を日本で適用したい。そして、こうしたデジタルトランスフォーメーションを加速するために、日本で施行されている規制・法律で変えたほうがいいものがあれば教えてほしい」ともいわれました。さらに、不動産賃貸や取引についても契約にはたくさんの紙が使われるので、ここにDocuSignを導入したら高い効果が得られるといった話も聞きました。

 それから、支払いに関するPCI DSSのようなDTMの団体である「xDTM Standard Association」のエグゼクティブディレクター、Hearther Petersenさんとも話し合うことができました。

 セキュリティ、データのプライバシ、アベイラビリティ(可用性)、エンフォーサビリティ(実行性)、スケーラビリティ、インターオペラビリティ(相互運用性)、それからユニバーサビリティとアクセサビリティという8つの品質基準を設け、それらがすべて数値化され、計測できるようになっていること、またそれを監査できるようになっていることを非常に重視しているということでした。DTMの標準に信頼性を持たせたいとのことでした。

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