第1のアプローチは、集中型のアプローチだ。このアプローチでは、ベンダー管理と調達のプロフェッショナルが、契約管理やパフォーマンスの管理、財務的な管理、リスク管理、関係管理などを含むすべての手続きに、集中的に対応する。このアプローチはコントロールと一貫性に優れているが、柔軟性に欠け、対応が遅れがちになる。
よく用いられている別の手法に、分散型のアプローチがある。このアプローチでは、一般に各事業部門やIT部門が個別にベンダーの管理を行う。この手法には、問題に素早く対応できるメリットがある一方、コントロールは緩みがちで、ベンダーに対するコントロールの一貫性も低くなる。
最近増えているのは、3つめのハイブリッド型アプローチだ。このアプローチでは、ベンダーを管理するための機能は組織全体に広がっており、その手続きに適した部署が担当する。このシナリオでは、例えば契約管理などの特定の手続きは集中的に行われるのに対し、パフォーマンス管理など、個々の事業部門やIT部門で対応する手続きもある。
Spencer氏によれば、変化の速いクラウドベンダーのエコシステムに対応可能なベンダー管理スタイルに対する必要性が高まっていることを背景に、最近ではこのハイブリッドモデルへの移行を進めている企業が増加しているという。
「それらの企業の多くは情報を検討している段階であり、ベンダー管理を担当するリーダーは、組織的な変化に対応しようとしている」と同氏は述べている。
「クラウドサービスを検討し、デジタルビジネスを目指している企業は、契約に至るプロセスを変え始めている。製品やサービスの購入に対する考え方は、変化しつつある。組織が変わるに従って、製品やサービスを調達するための手法もそれに適応している」(Spencer氏)
Gartnerは、新興ベンダーの取り扱いには、難しいさじ加減が必要だと述べ、「正式なベンダー管理構造」を強いることなく、柔軟な対応を可能にする「軽いタッチのアプローチ」を推奨している。
Gartnerのレポートでは、「事業部門をツールや、プロセスや、ベンダーガバナンスの仕組みで支援し、ニッチなデジタルビジネスベンダーから得られる創造性やイノベーションを最大限に生かせるようにすべきだ」と述べている。
Gartnerの提唱するITベンダー管理成熟度フレームワーク。
提供:Gartner
戦略的ベンダーから最大のメリットを引き出す
ForresterのプリンシパルアナリストDuncan Jones氏は、新興ベンダーだけでなく、戦略的ベンダーも事業目標を実現する上で重要な役割を果たしており、適切な対応が必要だと述べている。
Jones氏はこのことを、ウェブサイトやアプリなどの直接顧客の目に触れる技術的な要素の設計や構築を任せている、戦略的ベンダーを例に挙げて説明している。
業務ベンダーの管理に使用されているアプローチでは、アプローチが細かく文書で規定されていることが多いが、このやり方はあまりよく適合しない場合があると同氏は言う。
「従来のアプローチでは、塗装作業のアウトソーシングなどを想定しているが、実際に想定すべきなのは、インテリアデザイナーへの業務委託だ」とJones氏は述べている。