海外コメンタリー

複雑化するベンダー管理、クラウド時代に求められる変化とは - (page 3)

Nick Heath (TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-08-01 06:30

 同氏は、過去に同様の作業をうまくこなしたベンダーに仕事を依頼し、それらのベンダーに対して、より高い目標(例えば、顧客エンゲージメントや販売数の増加など)を達成する方法を自由に判断してもらうことを勧めている。

 「企業がベンダーに何がしたいかを細かく伝え、受注ベンダーがその通りのことを実行した結果、顧客から『これはあまりよくない、これは求めていたものではない』と言われる場合もある」と同氏は言う。

 例えばモバイルバンキングアプリの場合、「求められているのは、モバイルのデザインを理解し、作ろうとしているものが、最近のモバイルアプリの流行に合っているかどうかを判断できる人材だ」とJones氏は言う。

 「結果を出すためには、ベンダー側と発注側の両方が専門性とスキルを持ち、それらを組み合わせる必要がある」(Jones氏)

 Jones氏は、ベンダーに支払う費用は、ベンダーから得られる成果の上限に影響を与えると述べ、戦略的ベンダーを管理する際に用いる「次世代アプローチ」では、顧客サービスの改善といった大きな事業目標を実現することを重視すべきだ、と付け加えている。

 Jones氏は一般論として、近視眼的にサービスレベル保証契約(SLA)を重視しすぎると、結果が望ましいものでなくても、それが見えにくくなってしまう場合がある、と警告する。

 「契約書に書かれている具体的なサービスレベルにばかり注目すると、顧客体験のような、より抽象度の高い課題は重視されなくなる場合がある」と同氏は言う。

 同氏は、「あるベンダーのヘルプデスクサービスは、あまりにも質が悪かったため、誰もそのサービスを利用しなかった。その結果、そのベンダーはヘルプデスクチケットシステムのサービスレベル目標を容易に達成できていた」という事例を挙げた。

 また、契約でリスクやコストをベンダー側に押しつけることにこだわりすぎるべきではないという。Jones氏は、顧客が直接接触しているサービスがダウンした場合の評判への悪影響を考えれば、数百万ドルの節約など色あせてしまう、と指摘する。

 「それには、自分の会社と一緒に仕事をすることで、ベンダーが利益を上げることを認める必要がある」とJones氏は言う。

 「間違ったベンダー管理のアプローチでは、多くの場合、ベンダーを搾取し、ベンダーにすべてのリスクを押しつけ、ペナルティを課している。ベンダーを金銭的に締め上げすぎれば、ベンダーは利益を上げるために手を抜こうとし、悪循環が発生して事態は悪化の一途をたどる。

 最高の関係を作るためには、ベンダーにも利益を上げる必要があることを理解する必要がある。そのとき初めて、ベンダーは発注側の企業が必要とする次の一歩を踏み出すことができる」(Jones氏)

最初のステップは己を知ること

 ベンダー管理に関する最大の教訓は、多くの企業はまず、自分の会社の秩序を取り戻す必要があるということかもしれない。

 OvumのチーフアナリストSpencer Izard氏は、ベンダーを選択したり、ベンダー管理計画について判断する前に、企業はまず自分の会社がどのように業務を行っており、何を目標としているかを理解すべきだと述べている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]