トレンドマイクロは、インターネット上に公開されているコンピュータを検索できる「Shodan」を利用した調査で、10万1394件の医療機関と思われるIPアドレスが見つかったと発表した。電子カルテなど高度化する医療システムがサイバーリスクにさらされていると指摘する。
同社によると、見つかったIPアドレスには電子カルテシステムや病院の設備システム、オフィス機器やネットワーク機器、医療機器が含まれる。国別では、カナダ(52.81%)と米国(35.62%)が大多数を占めた。2カ国に比べて日本の割合は1.83%と小さいものの、3番目に多い状況だった。

インターネットに露出している医療関係のIPアドレスの上位10カ国(出典:トレンドマイクロ)
特に米国では、半数以上がSSL通信などによって保護されておらず、通信内容を盗聴される恐れがあるという。また、検索では「腫瘍」や「皮膚科」といったキーワードから、機器の詳細情報も調べられる。米国の医療機関で使用されているOSの上位3つは、Windows 7/8(31.57%)、PIX OS 7.0.x(27.10%)、IOS 123/12.4(12.41%)。米国以外ではWindows Sever 2008 R2(53.83%)、Windows 7/8(11.72%)、PIX OS 7.0.x(8.85%)だった。
同社は、5月12日頃に発生したマルウェア「WannaCry」の攻撃で、英国の病院がダウンするなどの被害が出た背景に、インターネット上で露出している大量の機器の存在があると分析する。WannaCryは、Windowsの脆弱性を突くなどの手法で、ネットワーク経由で拡散するワーム機能を持つ。
医療機関以外にもインターネット上で露出しているさまざまな機器が、WannaCryの感染リスクにさらされている。ただ、医療機関では診療データが利用不能になったり、医療機器が停止したりすることで、生命にかかわる深刻な事態につながりかねない。
トレンドマイクロは、この結果が日本にとっても問題だと指摘する。現在検討されているマイナンバーと医療データの連携がサイバー攻撃の標的にされる恐れもあり、こうしたリスクを確認してセキュリティ対策の強化を検討すべきだと提起している。