Rethink Internet:インターネット再考

ブロックチェーンは「価値のインターネット」--プライバシーを取り戻す

高橋幸治 2017年08月05日 07時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

つながりすぎた私たち、発信しすぎた私たち、共有しすぎた私たち

 夏目漱石の『草枕』(明治39年)の冒頭は、誰もが知っている有名な書き出しである。「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」。

 “ゆらぎ”を排除した一貫性や“あいだ”を無視した平明性は、他者との関係や自己との対話において柔軟性を欠いた「こわばり」を生む。私たちは常に安定的な恒常性を夢見つつも、決して地に脚を着けることができない、宙吊り状態の中で右往左往を繰り返すしかない。

 こうした人間のいかんともしがたい特性を、哲学者の鷲田清一氏は名著『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫)の中で以下のように表現している。

 わたしたちは、<過少>から<過剰>へと、あるいは逆に<過剰>から<過少>へと、たえず駆り立てられながら、そのどちらの極点にもとどまることができないものらしい。

 同じように、わたしたちには、あまりに大きな音もあまりに小さな音も、どちらもよく聞こえない。多すぎる光のなかでも少なすぎる光のなかでも、遠くに離れすぎても近くに寄りすぎても、ものは見えない。長すぎる話も短すぎる話も、うまく理解できない。

 このように、二つの深淵にはさまれ、たえず一方の極へと押しやられながら、行き着くことができないまま反対の極に向かって押しもどされ、結局はその中間に漂うしかない


ファッションから文学、映画に至るまであらゆるカルチャーを網羅し、80年代に独自の地位を築き上げた雑誌『マリ・クレール』に1987年から1988年にかけて連載された論考をまとめた鷲田清一氏の『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫)。身体と衣服との関係を哲学的視座から考究した名著

 さて、今回の本題である。情報の<過剰>に翻弄されつつ生きる現代の私たちは、いま、どんな右往左往を繰り返しているだろうか……? もちろん人によって捉え方の違いはあるだろうが、インターネット第1四半世紀の私たちは総じてソーシャルメディアなどを媒介に<過剰>につながり、<過剰>に発信し、あらゆるものを<過剰>に共有してきた。そして、つながりすぎた結果として人間関係に煩わされ、発信しすぎた結果として誰かの意見に憤り、自らの発言の炎上におびえ、共有しすぎた結果としてプライバシーの喪失とアイデンティティーの動揺に悩まされている。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
「企業セキュリティの歩き方」
「サイバーセキュリティ未来考」
「ネットワークセキュリティの要諦」
「セキュリティの論点」
スペシャル
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
展望2017
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
より賢く活用するためのOSS最新動向
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
米株式動向
日本株展望
企業決算