Raspberry Piでスパコン
これまでご紹介してきた内容は一般的なスパコンでしたが、複数台のコンピュータをつなげて高い性能を得るという視点で、身近なところで、スパコンを作れないかと考えた人たちがいました。
その中で出てきたアイデアが、Raspberry Pi(ラズパイ)の活用です。ラズパイは、2012年から発売されている小型のシングルボードコンピュータで、基本的なコンピュータ教育を促進することを目標に開発されました。
安価で、かつLinuxが稼働するこということで、幅広い年齢層から支持を得ています。このラズパイを活用してスパコンを自作するというプロジェクトが、世界中で立ち上がりました。
2013年末に米国のDavid Guill氏はこのRaspberry Piを40ノード接続して、700MHz/40コア、トータル20Gバイトのメモリ、5T~12Tバイトのディスク、最大440Gバイトのフラッシュディスクという構成のハイスペックマシンを組み上げました。
その当時の費用で約3000ドルでした。「オリジナルのクラスタ管理ソフトやシミュレーションエンジンを自分の手で作ってみたい」ということが現実のものになってきました。
OSSを活用するスパコン
また、スパコン環境を実現するために必要なソフトウェアは、すべてOSSで構成することが可能です。HPCクラスタシステムでは、並列計算を実現するためのコンポーネントとして、メッセージ通信ライブラリがあります。
そのメッセージ通信ライブラリで、最近多く採用されているのは、「OpenMPI」です。ソースコードをダウンロードしてコンパイルするまでもなく、CentOSであれば、パッケージの統合管理システム「yum」コマンドで簡単にセットアップできます。
それ以外にも、複数のCPUコアやメモリ、GPUなどの資源を効率よく割り当てるためのバッチジョブスケジューラなどもOSSで実現されており、世界最高速のスパコンで採用されています。
このようなユーティリティだけではなく、「OpenFOAM(Open Field Operation And Manipulation)」という流体解析パッケージも、OSSで公開されています。
「OpenFOAM」は英国インペリアルカレッジの学生が1989年に開発をスタートし、2004年12月にOSS化されたソフトウェアで、Linux、MacOS、Windows上で動作します。
流体/連続体シミュレーションの研究コード開発のプラットフォームとして、LES乱流モデル、燃焼モデル、自由表面モデル、混相流モデルなどが多数組み込まれており、ヨーロッパを中心とする自動車、化学、重工などの研究所などで爆発的にユーザー数が増えています。
日本では、一般社団法人オープンCAE学会がこの「OpenFOAM」関連で活発に活動しています。