サイバーセキュリティにおいて、現在は「圧倒的に攻撃者有利」の時代といわれている。低コストでマス向けの攻撃から、組織や国家の潤沢な財力によって行われる高度な標的型攻撃などさまざまである。
日々繰り返されるサイバー攻撃への対応が企業の命運を左右する現在、注目されているのが最高情報セキュリティ責任者(Chief Information Security Officer:CISO)だ。CISOの役割と企業が考えるべきセキュリティ対策について、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングのシニアマネージャーを務める森島直人氏に話を聞いた。
CISOの立場と役割
EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 シニアマネージャーである森島直人氏
ーー企業セキュリティを強化する上で、CISOを設置する企業が増えています。CISOの役割をどのように考えればいいのでしょうか。
森島氏:CISOの役割を説明するために、まず企業のセキュリティ対策に対する支出について考えてみましょう。
セキュリティに関する支出を「投資」と呼ぶセキュリティベンダーもいます。
しかし、それは本当でしょうか。セキュリティに対してお金を使ったからといって、そこから利益が得られるわけではありませんよね。経営者でセキュリティを投資と思っている方はほとんどいないでしょう。
企業にとってセキュリティは投資ではなく、やはりコストなのです。
では、そのコストは誰が負担すべきなのか。これを理解するは、「対応すべきリスクはどこから生まれるものか」を考える必要があります。
例えば、ある事業部では非常にたくさんの個人情報を保持しており、別の事業部では防衛に関する情報を持っているとします。当然ながら、それぞれの情報を狙う攻撃元や彼らの狙いは違いますから、リスクも異なります。
事業部が複数あれば、その規模やビジネスでそれぞれのリスクは変わってきます。もちろん、共通のリスクもありますが、個別に見ていくと持っている情報が異なりますから、狙われ方も違ってきます。