海外コメンタリー

官民連携でランサムウェア対抗、「No More Ransom」始動1年--取り組みと展望 - (page 2)

Danny Palmer (ZDNet.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎 2017年08月07日 06時30分

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 「私の役割の1つは、ホスティングプロバイダーを見つけることだった。当時私は、どのくらいのHTTPリクエストがあると思うかと尋ねられ、1日あたり1万2000件程度だろうと考えた」とSamani氏は言う。

 「実際には、公開初日に270万件のアクセスがあった。WannaCryが発生した週末などには、1日に800万件のアクセスがあったことを考えれば、需要はわれわれの想定よりもはるかに大きかった」

 取り組みの立ち上げが成功すると、アソシエイトパートナーとしてさらに7社のセキュリティ企業(Bitdefender、Check Point、Trend Micro、Emsisoft、ElevenPaths、Avast、CERT.PL)がプロジェクトに参加した。それぞれの会社が、復号化ツールの開発に貢献している。

 インターポール、ENISA、NCAをはじめとする警察機関も数十組織参加して、この枠組みに積極的に関与しており、さらに数十社のセキュリティ企業が支援を提供している。パートナーの数は109組織まで増えた。Wilson氏は、参加組織が多くなるほど、嬉しく感じるという。「貢献してくれる人が多くなるほど、リソースも良くなっていく」と同氏は言う。

 サイバー犯罪は世界的な問題であり、警察機関同士の国際的な協力関係も以前より活発になっているが、ルールや規制によって、警察機関が思うようなスピードで対応できないこともある。

 これはグローバルに活動する犯罪組織に対抗するには不利な条件だが、民間のサイバーセキュリティ企業はより柔軟に対応できる。このことが、No More Ransomが開発され次第復号化ツールを公開し、早いペースでサイバー犯罪者に対抗することを可能にしている。

 「警察機関には、犯罪者にはない制約がある。それは大量の書類仕事だ。しかしこのような形態のプロジェクトであれば、活動のペースが落ちることはない」とEmm氏は言う。

 No More Ransomからダウンロードされたツールによって復号化できた事例の正確な数を知ることは難しい。これは、サイトではリンクを提供しているだけで、その後何が起こるかを監視しているわけではないからだ。しかし推定では、ツールを使って2万8000台が復号化され、数百万ドルの身代金が助かったと考えられている。

 EC3のWilson氏は、「このことは、各国がそれぞれ活動を進めるよりも、団結して対応することが有効であることを強く示唆している」と述べている。

 No More Ransomのポータルに掲載される復号化ツールは、さまざまな形式を取っている。何度かに分けて追加されることもあれば、個別の復号化ツールの準備ができ次第掲載されることもある。しかし、これらのツールはどのように作られているのだろうか。

 パターンはいくつもある。1つ目のパターンは、暗号化鍵がリークされた場合だ。実際、No More Ransomがスタートしてからわずか数時間後に、これが起こっている。Petyaを仕掛けたサイバー犯罪グループは、(Petyaがグローバルな問題になるよりもかなり前に)競合するランサムウェアである「Chimera」の復号化鍵を3500個リークしている。「われわれはこれを入手し、ツールを作った」とSamani氏は述べている。

 しかし大抵の場合、ランサムウェアの復号化は非常に大変な作業であり、サイバーセキュリティ企業と警察機関が協力してランサムウェアの亜種を特定し、コードをクラッキングしている。

 「警察機関と協力して使用されているインフラを特定し、適切な法的プロセスを経て鍵サーバを押収して、復号化鍵を抽出する」とSamani氏は説明する。「Shade」の復号化にはこの手法が使われ、16万5000個の復号化鍵が公開された。

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