海外コメンタリー

ハイブリッドクラウド戦略にありがちな5つの落とし穴

Alison DeNisco (TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎 2017年08月08日 06時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 企業におけるハイブリッドクラウドの採用は、ますます増えてきている。2016年に米ZDNetの姉妹サイトTech Pro Researchが実施した「調査」では、調査対象となったITプロフェッショナルの68%が、所属組織ですでにハイブリッドクラウドを利用しているか、導入を検討していると回答した。さらに回答者の99%は、所属企業のシステムおよびアプリケーションの一部が、今後5年間でクラウドベースになると予想している。

 ForresterのアナリストLauren Nelson氏は、「ほぼすべての企業が、クラウドとほかの何かの組み合わせを利用している。それはSaaSアプリケーションである場合もあれば、パブリックアプリケーションである場合もある」と述べている。「わたしは、今やすべての企業は、ある程度までハイブリッドであると言って構わないと考えている」

 最近実施された451 Researchの調査では、ITプロフェッショナルに対していくつかの選択肢を示し、回答者の所属企業で採用しているハイブリッド戦略が、どの説明にもっともよく当てはまるかと尋ねている。それに対し回答者の36%までが、費用、パフォーマンス、セキュリティ、データの配置状況、およびその他の要件に応じて、もっとも適切なIT環境にワークロードを動的に移行することを重視していると述べている。また31%は、オンプレミスのリソースは主に既存のワークロードに使用し、新たなワークロードについては、IaaSやパブリッククラウド、ホステッドクラウドを利用していると回答している。その一方で27%の回答者は、顧客やエンドユーザーが直接接触するシステムはIaaS、パブリッククラウド、あるいはホステッドクラウドで実行しているものの、社内の事業システムとデータはオンプレミスで扱っていると答えた。

 451 ResearchのアナリストCarl Lehmann氏は、「企業はオンプレミスとオフプレミスの両方を含む、複数の実行環境を利用したいと考えている」と述べている。「企業は各環境のさまざまな特性(費用、パフォーマンス、セキュリティ、知的財産権の問題、インフラに及ぼせるコントロールの程度)を理解し、各ワークロードを最適な環境に割り当てている」

 しかし多くの組織は、効果的にハイブリッド戦略を策定し、実施し、管理する方法をはっきり理解していないという。この記事では、ハイブリッドクラウド戦略を展開する際に注意すべき、よくある5つの落とし穴を紹介する。

1.目的が設定されていない

 多くの企業では、ハイブリッドクラウドの定義について混乱が残っている。最近Stratoscaleが実施した調査では、企業幹部のハイブリッドクラウドに対する定義が、ITプロフェッショナルの定義とは若干異なっていることが明らかになった。

 GartnerのアナリストMindy Cancila氏は、「当社の顧客の多くは、ハイブリッドクラウドを最終的な状態として捉えている」と述べている。「しかし実は、そうする必要がある理由を明確に理解している企業は、非常に少ないことが分かってきた。そのため、多くの企業が何らかの種類のパブリッククラウドサービスを導入する意向を持っている一方で、それらの企業がすぐにデータセンターを廃止してしまう可能性は低い」。Cancila氏は、企業は当面の間、ハイブリッドの状態に止まる可能性が高いと述べている。

 またForresterのNelson氏は、多くの企業はクラウドの真の目的について考えておらず、「ハイブリッドクラウドについて、『ほかの企業がやっているから、自社でもそうしよう』と考えているだけだ」と述べている。

 ハイブリッドクラウドが成功する可能性を高めるには、「方向性と優先順位を設定し、クラウドで実現しようとしている中核的な価値を明確に定める」べきであり、「定期的に計画を再検討」すべきだとNelson氏は述べている。

2.パブリッククラウド対プライベートクラウドの議論に嵌まり込む

 Cancila氏は、企業の中でパブリッククラウド対プライベートクラウドの政治的な議論を避けることが重要だと述べている。「むしろ、パブリッククラウドを何らかの形で利用していかざるを得ないことを認識し、何をパブリッククラウドに移行し、何を残すべきかを評価できるように、適切なフレームワークを構築すべきだ」と同氏は付け加えた。

 Cancila氏によれば、こういった議論が起きるのは、多くの企業にとってクラウドが新しい技術だからだという。企業はこれまでデータを完全にコントロールし、把握してきたが、クラウドに移行すれば、データに対するコントロールをある程度失うことになる。「パブリッククラウドプロバイダーが、従来と同じセキュリティ水準で、同じレベルの可用性を提供できるのか、あるいは性能は向上するのかがよく議論になる」とCancila氏は述べている。

 同氏は、そういった判断を下すために、アプリケーションを評価し、クラウドプロバイダーを選択し、パブリッククラウドの導入を業務として管理するためのフレームワークを構築することを勧めている。

 Nelson氏は、このフレームワークは、何をオンプレミスで動かし、何をクラウドに移すかという微妙なバランスを取るのに使われるのと同時に、クラウドが成熟し、データセンターのビジネスが変化し、レガシーなハードウェアが古くなるとともに、そのバランスを見直すのに役立つと述べている。同氏は、「これは、過去に下した判断の一部をコンスタントに常に再評価していく、ライフサイクルを念頭に置いたモデルだ」と述べている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
ハードから読み解くITトレンド放談
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
研究現場から見たAI
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
内製化とユーザー体験の関係
米ZDNet編集長Larryの独り言
今週の明言
「プロジェクトマネジメント」の解き方
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
Fintechの正体
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
情報通信技術の新しい使い方
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
通信のゆくえを追う
セキュリティ
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
セキュリティの論点
ネットワークセキュリティ
スペシャル
Gartner Symposium
企業決算
ソフトウェア開発パラダイムの進化
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
CSIRT座談会--バンダイナムコや大成建設、DeNAに聞く
創造的破壊を--次世代SIer座談会
「SD-WAN」の現在
展望2017
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
さとうなおきの「週刊Azureなう」
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
中国ビジネス四方山話
より賢く活用するためのOSS最新動向
「Windows 10」法人導入の手引き
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
実践ビッグデータ
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化