ポスターセッション
1日目、2日目にはポスターセッションが行われた。59件のポスター発表があり、量子アニーリングのソフトウェア開発を行う海外企業である1QBitやQxBranch、Booz Allen Hamiltonによる、量子アニーリングを機械学習の高速化に利用するという発表はひときわ大きな注目を集めていた。
Booz Allen HamiltonのJoseph S. Dulny氏によれば、類似の成果をスパコンの国際会議でも発表したところ、大きな反響を呼んだという。スパコン業界でも注目を集めている量子アニーリングであるが、実社会応用に向けた取り組みが大きなうねりとなって生じている。
国内組織の研究開発状況に目を転じると、大学や国立研究開発法人によるポスター発表はもちろんのこと、国内企業のポスター発表が多かったという印象がある。
2016年Google LAで開催されたAQC2016では国内企業の参加は極めて珍しかったが、産業界における研究開発も着々と進んでおり、AQC2017ではいくつかの企業か研究開発状況を持ち込んだ。
そのため、それぞれの企業の研究開発動向を知る場として有用だったとの声も参加者の方々から多く聞こえた。
リクルートライフスタイルの本橋智光氏によるポスター発表では、この記事やこの記事で紹介されているように、量子アニーリングマシンD-Waveを使ったアイテム推薦の最適化に関する報告がなされた。
デンソーの岡田俊太郎氏は、組み合せ最適化処理を高速に行うために考慮すべき点を、理論的見地から詳細に検討した結果を報告した。この記事で寺部雅能氏(デンソー)が述べているように、IoT向けサーバ領域で量子アニーリングの技術が使えると期待している。
ブレインパッドの伊藤多一氏によるポスター発表では、この記事で紹介されているように、宅配の最適配送問題について複数種類のモデルを作り、比較検討を行った。
実際の活用シーンを念頭に置いた応用研究である。Nextremerの阿部智彦氏によるポスター発表では、自己組織化マップと呼ばれるニューラルネットワークモデルの一種に量子アニーリングを用いるための理論を構築したとの報告があった。
PEZY Computingの石川仁氏によるポスター発表では、 HPC(High Performance Computing) 用途のプロセッサ「PEZY-SC」の性能を引き出す量子モンテカルロ(最適化問題のための計算手法)実装方法についての報告がなされた。