セキュリティを含むIT技術者の人材不足
現在、日本のIT業界は2020年の東京五輪に向けて活況を呈し、「デジタル変革」と呼ばれる潮流が巻き起こる。そうしたさまざまな事柄の結果が出る節目が2025年だ。今回はIT部門や人材を取り巻く現状を踏まえて、2017年から見た2025年の姿を予想してみたい。2025年にどのような事象が考えられ、今から、どのような準備が必要なのだろうか。
IT業界を50年のスパンで俯瞰した場合、大きな節目が3回到来する。1回目は、1975年当時の電算化(オンライン化)の波であり、日本企業が海外の汎用機をこぞって採用した時代だ。その後、25年を経て「2000年問題」への対応の前後が次の節目だった。2000年問題に対応していた数カ月の間は、万一に備えて案件を凍結した企業が2000年以降、一気に案件を発注した。当時、これは想定外の動きで、2000年以降に「ITバブル」(ネットバブル)として到来した。
今回注目するのは、同じように2020年の五輪特需が一段落した2025年である。ある面では、今と同じような慢性的なIT技術者の不足が考えられる。下の図1では、「2025年に向けたIT業界50年の変遷」(第1次オンライン化から五輪特需以降)を示している。

図1:2025年に向けたIT業界50年の変遷(第1次オンライン化から五輪特需以降)、出典:dss(2017年8月)
IT技術者の中でも、例えば、COBOLやアセンブラなどのレガシー言語は、現在でも安定的なニーズが確認できるため、2025年も変わらない需要があると思う。
C言語やVisual Basic(VB)などの2000年前後に開発されたシステムに関しては、保守する技術者はいるものの、SIer/IT子会社は、採算が合わないためとして、単価が高いシステムや言語に人を投入することが予測される。そのため2025年には、取り残される(孤立してしまう)「ニュー・レガシー」と呼ばれるシステム群が出現するであろう。これは、2000年前後のオープン系、クライアント/サーバモデルのシステムなどで、本番稼働から25年以上経過したものを指す。
セキュリティに関しては、現在でも技術的なロジックやコーディング、マルウェアの解析など、ハッカー側のスキルに到達した技術者(ホワイトハッカー相当)が皆無に近く、2025年もこの状況は変わらないだろう。
2020年には、セキュリティを概念的に学んだ(試験科目として会得した、オリンピックに向けて育成した)大量のセキュリティ要員がベンダーやSIer、ユーザー系IT子会社から誕生する。この要員の増加はうれしいことだが、その反面、2025年にセキュリティ要員の余剰になって、人月単価が下落すると思われる。むしろ、今のセキュリティ要員は貴重な存在であり、現在の方が単価は高い。