予想される2025年のIT部門の姿
前回述べたように、2025年は、25年に一度訪れるIT業界の大きな変革時期である。これは、企業の情報システム部門および情報システム子会社、ベンダー/SIerにとって、人材や業界、業態の構造を変更できるチャンスでもある。下の表は、2025年におけるこの構造の変化をまとめたものだ。

表1:2025年のIT業界における「人材/業界/業態」の分類、出典:dss(2017年8月)
まず2025年は、ベンダー/SIerとユーザー系IT子会社の垣根が低くなることが必須だ。「元○○社の情報システム部門が、現在はSIerのxxソリューション本部に集約される」ということが多くなる。
また、情報システム部門が委託先に発注する方式が、現在の3階層(例:親会社から子会社、子会社から委託先)構造から変化し、直接発注する取引が増えると考えられる。
この要因が、2010年頃より始まったクラウドの契約モデルだ。2025年には、これがスタンダードになり、間接的に取りまとめをする法人(プロジェクト管理を得意とする法人)が間に入らない2階層構造となる。

図4:これまでの情報システム部門の3階層発注モデル、出典:dss(2017年8月)
図4の場合、毎回情報システム子会社分は2割利益を生む安定的な経営であり、責任やリスクも子会社で引き取る面で、効率的である。ただ、2025年になると、親会社から直接委託先へ契約する2階層モデルがメインとなり、親会社側でリスクを受容するビジネスモデルとなる。
そのため、親会社(ここではIT部門や管理本部のITグループなど)が、2025年にリスクを受容できない場合は、従来通り、情報システム子会社(新しくSIerに売却した子会社)にリスクを転嫁する。
このあたりの責任やリスクの引き取り先が2025年に、企業に突き付けられる。そこで活躍できるのは、お金(投資)ではなく、前回の図2で説明した、再雇用で受け入れている元本部長や部長クラスの人材(要員)である。「2025年のIT部門のあり方」で最もキーとなるポイントは、「できる人材を公平に評価する」ことだ。
その際、「現役だから」「英語ができるから」という面も一理あるが、2025年には現在ブームとなっている「働き方改革」も定着している。そのため、再雇用者と言っても、相手はメールやウェブ会議でしか会ったことがないプロかもしれない。
逆に「2025年のIT部門のあり方」として、「できる人材」を今から育てるには、責任やリスクの引き取り先になるよう、「根回しができる(社内営業ができる)IT部門」が望まれる。
具体的には、これまで実施していなかった各部門への予算の行脚(かつての情報システム部門の予算の聖域は既に無くなっていることを通知する)や、役員会議で幅を利かせるなど、「社内営業」をする。こうして、最悪のリスクは各部門から予算を捻出して回避し、「精神論」や「職人論」に走らないことが大切である。
2017年現在でも、既に勘のいい情報システム子会社は、将来に向けて(存続のために)「親会社発注:社外受注=100:0」であった割合を、90:10や80:20など、徐々に「社外受注」(外販)の割合を拡大している。