「マイデータ」の時代

「個人主導データ流通」が加速するマーケティング変革--個人化から個性化へ - (page 3)

伊藤 直之(インテージ)

2017-08-25 07:00

エンゲージメント構築主体が企業から生活者へ


 企業が保有する顧客のデータ分析に基づいて興味関心を推測し、広告などのプッシュ型の施策によって注意を促して購買の囲い込みを図る「顧客関係管理(Customer Relationship Management:CRM)」は、企業側から一方的に生活者のアテンションを獲得しようとする企業主体の考え方である。

 一方で、先述したように、生活者はインターネットの恩恵によりさまざまなチャネルから情報を得ており、既に顕在化しているニーズを充足させるための仕組みも必要になる。

 そこで、生活者が自身の興味関心に関する、意思や情報などを企業に共有し、自分の要望に則した提案を求め、最適な選択肢を提供を受ける”プル型の関係構築の仕組み”である「VRM(Vendor Relationship Management)」という考え方が出てくる。

 VRMによって既存のCRMが不要になるわけではなく、個人から共有を受けて分析した結果がCRMとしての顧客情報の質を向上させ、VRMとCRMの連携によって、プライバシーに配慮した”Controlled Push”と”Informed Pull”による、効率的なマーケティングが可能になる。

個人最適化アプローチは生活者起点へ


 IBMとEconsultancyが2015年に実施した調査によると、企業担当者の9割は生活者に対してパーソナライズした顧客体験が重要だと認識している。8割が顧客を包括的に理解できていると考えている一方、8割の生活者は企業側が自分を理解できていないと感じており、企業と生活者の間でギャップが存在していることが分かった。

 このギャップの要因の1つとして、CRMでの過去履歴の分析に基づいた企業視点でのパーソナライズが、必ずしも最適なレコメンドではないことが挙げられる。

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