例えば、カップ麺を昼休みにひんぱんに購入する人への従来のパーソナライズによるレコメンドでは、新商品のカップラーメンなどファストフードをすすめることになる。
一方、もしその人が健康志向であるのに多忙でファストフードを買ってしまっているということが分かれば、同じように手軽に食べられるヘルシーで栄養価の高い商品をレコメンドできる。
このように生活者とのインタラクションを通じて、その時点での意思を反映した個人が望むことに応えることが最適なマーケティングである。Personalization(個人化)からIndividualization(個性化)という、生活者視点での最適化アプローチが求められる。
生活者視点でビジネスを考えれば生活者起点へのマーケティング変化は必然
これらのような生活者起点のマーケティングは、節目となるライフイベントに関わるサービスではある程度実現されている。結婚や引越し、出産、転職などのタイミングでは、個人からの情報共有と担当者との密なコミュニケーションによって、個人が本当に望むものを提供できているはずだ。
これらは多大なコミュニケーションコストをかけているからこそできることで、それ以外の分野において実現困難だと考えるかもしれない。
しかし、テクノロジの進化によって、個人主導のデータ流通やCustomerTechなど、ディープな個人情報を基に相互のインタラクションが可能になった。
これまでコミュニケーションコストをかけられなかった分野でも、徐々に生活者を起点としたマーケティングアプローチが一般的になっていくのでないだろうか。
企業人としてビジネスを考える際、企業視点やプロダクト視点、マーケット視点など、どうしても他人ゴトのように生活者を俯瞰(ふかん)してしまうことがある。
しかし、一人の生活者として自分ゴト化して自社のマーケティングやビジネスを考えてみると、個々人の意思を理解したマーケティングの必要性を理解できるはずだ。
- 伊藤 直之(いとう なおゆき)
- 2008年、株式会社インテージ入社。主に消費財メーカーの社内外データ利活用基盤構築やマーケティングリサーチに従事した後、現在はデジタルマーケティング領域の新規事業開発を行う。2013年よりオープンデータを推進するOpen Knowledge Japan運営メンバー。ビジネス領域でのオープンデータやパーソナルデータなど多様なデータの公開・流通による利活用を推進することによって、より良い社会の実現を目指す。