「一巡」した米国の宇宙ベンチャーと「二巡目以降」の世界
NewSpace 2017から見えてきたことを振り返ろう。これまで業界の注目の中心であった商用ロケット・衛星の開発については、ここ数年でベンチャー各社の勝ち負けがある程度見えてきたことで、業界が一巡したと言える。
今、業界では「その先(二巡目以降)の宇宙ビジネス」に関心が移りつつある。その一つが、光学に続く、SARなど次世代のリモートセンシング画像解析ビジネスである。加えて、通信インフラなど、衛星コンステレーション時代を見据えた各種の基盤整備ビジネスも、既に萌芽が生まれつつある。
もう一つが、深宇宙ビジネスである。地球周回軌道周辺のビジネスがある程度収束する中、次のフロンティアは月や小惑星の商用開発であり、欧米ではそれに政府や企業が本気で取り組む流れができつつあることを、筆者は実感した。
二巡目以降のビジネスとしては、これ以外にも宇宙空間系ビジネスとして微小重力環境下でのハードウェア製造やライフサイエンス研究など、さまざまな新領域が並ぶ。
新しい宇宙ビジネスのこれまで(一巡目)と今後のフロンティア(二巡目以降)
日本の宇宙ビジネスにも、大きな動きが起きているが、まだ一巡目の最中であり、米国の動きにはまだ及ばない。しかし、日本の宇宙ベンチャーのユニークな点として、数こそ少ないものの、参入している分野広くさまざまに宇宙ビジネスに参入しているプレイヤーが存在している点だ。
小型SAR衛星は、内閣府ImPactに参画する慶應義塾大学の白坂成功教授による開発が成功すれば商用化が期待される。
また、衛星SAR画像解析には、スペースシフトが取り組んでいる(CEOの金本氏はNewSpace 2017で日本人で唯一、登壇した)。宇宙デブリ処理についてはアストロスケールが、衛星向け通信インフラ整備はインフォステラが、月面開発はispaceが、それぞれ世界と伍するビジネス開発に取り組んでいる。
日本の宇宙ベンチャーには大きなポテンシャルがあり、これらの取り組みが実を結べば、「二巡目以降」を行く世界の宇宙ビジネスにおいて、日本のプレゼンスを大いに発信できるであろう。
- 佐藤将史 株式会社野村総合研究所 上級コンサルタント
- 宇宙業界やベンチャー振興を軸に、科学技術・イノベーション関連の政府・企業をクライアントとしたコンサルティング事業に従事。政策立案からビジネス戦略まで幅広く行う。東京大学理学部卒(2001年、地球惑星物理)、同大学院理学系研究科修了(2003年、地球惑星科学)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)MPP(2013年、公共政策修士)。 総務省「宇宙xICTに関する懇談会」構成員。JAXA「GOSAT-2/Khalifasat相乗り超小型衛星の選定」委員。一般社団法人SPACETIDE共同創設者・理事。