エコシステム作りと人材育成に力を注ぐ
ABEJAは2017年冬にも、AIプラットフォーム「ABEJA Platform Open」の提供を開始する。パートナーとのエコシステム作りに向けて、2016年12月にアルファ版、2017年夏にベータ版を出した同プラットフォームは、社内活用してきたIoTなどの大量データの取得・蓄積・学習・解析・出力などするための「ABEJA Platform」をオープン化したもの。パートナーのエンジニアら向けに汎用化し、PaaSに仕立てたのだ。
パートナーは、IoTデバイスやIoTネットワーク、システムインテグレーション、コンサルティング、APIエコノミーの5領域から募り、すでに50社近くになった。パートナーへの期待の1つは、業種別SaaSの開発にある。ABEJA自身も小売業向けSaaSを提供しているが、品ぞろえが豊富になればなるほど、プラットフォームとして地盤が強固になる。なので、パートナーのさらなる拡充に取り組む。
そのため、ディープラーニングの理論から実践活用までの教育プログラムを2017年3月に用意した。線形代数や微積分、プログラミング言語PythonなどはAIエンジニアに必須になる。ABEJAがこうしたAI人材育成に力を入れているのは、「人がすべてなのだが、人材が少なく、取り合いになっている」(岡田社長)ことにもある。なので、社員約60人のうち40人強のエンジニアは約10カ国から採用する。米国のハーバード大学やスタンフォード大学などからインターンも受け入れている。さらに、東京大学名誉教授の國井利泰氏、はこだて未来大学の松原仁教授ら、そうそうたる技術顧問から技術的なアドバンスもうけるという。
2016年から大学向けに教育プログラムを無償提供したり、講師を派遣したりもする。共同研究にも取り組む。優秀な学生にAIに興味をもってもらいたいからだ。社会のさまざまな課題をAIで解決したり、新しいビジネスを創出したりする意欲的なエンジニアに育ってほしいのだろう。「テクノプレナーとリベラルアーツを大事にする」と、岡田社長は表現する。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。