--SAPのような企業は、オンプレミスからクラウドの世界へといかに移行しているのですか。
ライセンスを基盤とした世界では、最初に大きな契約をし、前払いで現金が入ってきて、その後のメンテナンス期間を通じて収益があります。サブスクリプションモデルのクラウドの世界では、毎月定期的に発生する収益源を持つことになります。この変化は、営業の基礎を変えます。また、営業の文化も変える必要があります。
営業側には大きなプレッシャーがかかりますが、これは財務側にとっても同じです。流動性管理と資金管理の違いだと考えてもらえばいいでしょう。これを可能にする必要があるのです。
この変化は、企業の端から端までにおよび、デジタルマーケティングのアプローチや大口販売のプロセスなども影響を受けます。ただし、新たな営業チャネルを手に入れることは、刺激的でもあります。われわれはオンライン営業やデジタル営業チャネルなどの取り組みに踏み込んでおり、sapstore.comでわが社が提供しているウェブ体験は、全体を通じてトライアルから購入へのプロセスを支えるようになっています。
これはIT部門の観点からはワクワクさせられることです。なぜなら、SAPの顧客はsapstore.comにアクセスし、人間による介入なしで、オンラインでトライアルを開始し、ソリューションを購入することになるからです。そのプロセスは100%最適化され、自動化されています。
つまり、IT部門はバリューチェーンの一部になっているのです。IT部門がそういったことをただ支援するのではなく、これらの新たなビジネスモデルを可能にする技術のプラットフォームを実現する役割を果たすのは、刺激的なことです。
--CIOとIT部門の役割はどう変わりましたか。
IT部門は業績について議論しなくてはならなくなりました。単にある場面でソリューションを提供したり、別の場面で教育を施したりするだけの役割ではなくなっています。ただインフラを運用するだけではなくなりました。自らの活動によって、業績に貢献する部門になっています。
クラウドを使えば、CIOは一般的なサービスを自ら提供するのをやめて、会社のバリューチェーンに集中できます。データセンターや運用だけを担ってきた従来の役割とはまったく異なります。
IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)事業者からサービスを買って自前のインフラを廃止すれば、精神的な余裕を作れます。これは重要なことで、そうすることで貴重な時間を会社の差別化に使うことができるのです。これは、IaaSに関連する例の1つにすぎません。CIOは、企業として価値を提供することに集中する必要があります。
IT組織としてのわれわれの主な目的は、SAPがエンドユーザーを満足させるデジタルエンタープライズになるのを可能にすることです。