2017年4月に、ITサービス管理など機能のSaaSで提供するServiceNowのプレジデント兼最高経営責任者(CEO)に就任したJohn Donahoe氏は、Bain & CompanyやeBayのCEOを歴任した人物だ。「この10年にコンシューマーで起きたデジタル変革の波がエンタープライズに到来した。デジタル変革の推進役が期待されるIT部門にとっては最高のチャンスだ」と話す。
Donahoe氏によれば、同氏がこれまでに対談した企業のトップは、皆一様にビジネスのデジタル変革を進めたがっているという。その実現にテクノロジが欠かせず、組織のトップはテクノロジを司るIT部門にその推進役を担ってほしいと考えている。しかし、業務システムの運用や保守に追われるIT部門にその余力がないことが、デジタル変革の足かせになっている。

ServiceNowのプレジデント兼最高経営責任者のJohn Donahoe氏
「eBayなどでの経験から言えるのは、コンシューマー市場を大きく変えたテクノロジに比べて、職場で利用されるテクノロジは見劣りしているということだ。逆に言えば、3年から5年後には、職場もコンシューマー市場と同じように大きく変化している。今がそのスタート地点だ」
コンシューマーにおけるデジタル変革の一例が、eコマースだという。商品を購入する時、昔ならチラシやカタログなどで目的の物を探し、販売店やメーカーに問い合わせをしていた。現在は、スマートフォンだけで商品の検索から発注、決済までできるし、お勧めの商品も自動的に提案される。
既に多くの人々が、プライベートでこうした“デジタル体験”に慣れ親しんでいる。彼らが勤め先の職場でも同じように体験できるようにすることが、まずIT部門がなすべきデジタル変革の第一歩だとDonahoe氏は主張する。
「例えば、入社時にPCをセットアップし、IDカードを作成し、メールアカウントを設定し、業務システムにサインアップし、給与の口座を指定する。規則などの研修も受けるだろう。やることがあまりに多く、社員も関係部署も大変だ。ServiceNowでは、社員がスマホのアプリに一度情報を登録すれば、後はフローに従って業務環境が用意される」
eBay時代はServiceNowのユーザーだったというDonahoe氏は、こうした職場でのデジタル体験がServiceNowに参画する1つの動機になったという。
「社員が喜ぶデジタル体験を提供することは、IT部門の従来の仕事をシンプルにできるし、コストも削減できる。その分のリソースをデジタル変革に再投資できれば、IT部門はより生産的になれるし、プロフィットセンターになれるはずだ」