どのRPAツールを選択するか
昨今では特定のツールありきで始めるのではなく、複数のツールを比較検討していくアプローチを取り入れるケースが増えてきている。ツールの選択に当たって必要となるおおよその要素は第3回で述べたが、ツールの選択は運用体制にも大きく関わってくる。特にコーディング型のRPAは業務部門で自前運用するにはスキルセット面で現時点ではそれなりにハードルがある。
出来上がったデモンストレーションや表層面でのプロセス管理機能だけではわからない部分だが、ロボットを作りこんでいく技術の設計思想は重要な選択要素となる。
実際にRPA活用を進める際にはRPAに限らないその他の技術も組み合わせていくことも多いのだが、他技術との組み合わせについては次回で述べたい。
ただし、RPAはUI層を操作して動くものであり、他の技術と組合せる際にAPIの準備など連携において大きな技術的な制約はないケースが多いため、ある程度の機能性が確保されているRPAであれば、他技術との関連などを含めてあまり検討項目を複雑にするよりもある程度シンプルにRPAに特化して選択していいと思う。
では、上記も踏まえて、RPAに取り組むにあたりどのようなアプローチが取り得るか。今まで多かったアプローチと今後増えるであろうアプローチを、本格的に展開していく前の段階に着目して考えてみたい。
簡便なPOCアプローチ
RPAに対する理解が深くない場合や、自社において効果を見出せる業務領域が特定しきれないケースの場合にはこちらのアプローチを取るケースが多い。これまで多かったアプローチだ。RPAとはどんなものか、という段階であるため、可能な限り投資規模を抑えるために、運用体制の検討や部門をまたいだ啓蒙などの活動を省いているケースが多い。RPAツール自体も提案してきた会社のものをまず使ってみる、ということが多いのではないだろうか。
ラフな書き方をするとこれが多くの企業が取ったアプローチで、まずは特定の部門においてクイックに使ってみるという域を出ないため、パイロット導入完了まで6~8週間程度で済む。だが本番導入・展開段階に入っていくためにはまだ多くの検討項目が残るため、数カ月の間をおいてその間に社内の合意形成や不足検討項目を検討してくことになる。
初期投資を抑えるには1つの考え方ではあるが、進め方としては慎重であり効果の刈り取りまでは時間がかかるやり方でもある。金融機関など大規模にRPAが効果を出すことがすぐに見えるわけではない企業、製造・流通・サービス業などのバックオフィスではよくとられるアプローチである。
また、次回以降に述べるがまだ事例が多くない他の技術と組合せた複雑なユースケースにおいては、初期投資を抑え社内合意形成を得る材料を整備することができる点で効果的な進め方である。