ーーIndustrie 4.0の専門家でいらっしゃいます。Industrie 4.0分野の動向について教えてください。
Industrie 4.0は、製造業にとっては工場のオートメーション、ビジネスプロセスのオートメーションを意味する。数年前のようにメディアで騒がれなくなったが、業界では着実に理解が広まり、実装が進んでいる。特に、製造業が強いドイツ、中国、韓国、日本ではとても活発だ。米国では、”Indsutrial Internet”として進んでいる。
Industrie 4.0は製造業の将来であり、グローバルで競争するにあたってとても重要なものだ。
ーーGE、Siemens、Boschなどの大手メーカーはIoTでビジネスモデルを変えています。この点での日本の製造業をどう見ていますか?
GEのIoTプラットフォームであるPredixのようなものを日本で探したときに、日立の「Lumada」などの取り組みが始まった段階であることが分かる。まだ競争は始まったばかりであり、各社は顧客がどのように活用できるのかを見出そうとしている。
Siemens、Bosch、GE、日立などがやっていることは、コネクテッド製品の構築。iPhoneでiTuneが必要なのと同じように、GEの発電所はPredixなしで機能しない。日立もLumadaなしで機能しない。各社はこのようにコネクテッドの戦略を実行しており、これは論理的なステップだ。
ーーこれらIoTプラットフォームの相互運用性は?
顧客のほとんどはさまざまなブランドのマシンを利用している。顧客は今後、これらのさまざまなマシンからデータを集め、データから得た洞察主導のエンタープライズを作ることになる。そこでは将来的に、相互運用性や標準が必要になるだろう。
Industrie 4.0では、リファレンスアーキテクチャについて議論が進んでいる。米国のIndustrial Internet Consortium(IIC)でも、標準、テストベッドなどさまざまな取り組みがある。将来、相互運用が実現するとみている。
IoTでは1社で全てができるというベンダーはない。ハードウェア、接続性、組み込まれたソフトウェア、デバイス管理、ストレージプラッットフォーム、アナリティクス、ML、ブロックチェーンなどが必要。顧客はIoTがやりたいからIoTをやっているのではなく、接続することで得られるビジネスの成果改善のためにやっている。
成果には、顧客のロイヤリティ、新しいビジネスモデルなどがある。われわれの顧客であるイタリア国鉄の場合、最初の成果は8~10%のメンテコスト削減だ。顧客の満足度が上がり、電車の遅延のために顧客に払っていた罰金も削減できる。
ーーIoTはSAPのビジネスをどう変えていますか?
IoTは必ずしもCIOの責任ではなく、同じ組織でも、これまでとは異なる人と話す必要がある。IoTはイノベーションとみられており、石とスポンジのたとえなら、石ではなくスポンジを買いたい人と話す必要がある。そこで、CEO、マーケティング、営業、製造、ロジスティックスなどのトップと話す機会が増えた。これはSAPにとっても刺激になっている。