デジタルワークスペース戦略を進める米Citrix Systemsが、主力製品であるデスクトップやアプリケーションの仮想化技術に加えて重要な技術と位置づけるのが、2011年に買収したファイル共有の「ShareFile」だ。
「ファイル共有はコモディティになった」というCitrixは、今後どのようにShareFileを進化させるのか。Citrixでバイスプレジデント兼エンタープライズプロダクトマネジメントを務めるJay Tomlin氏に話を聞いた。
Citrixのデジタルワークスペース戦略におけるShareFileの役割は?
Tomlin氏 ShareFileはファイル共有・同期からコンテンツコラボレーションサービスへと進化している。
企業がさまざまな課題を解決できるが、主に生産性の改善(1)、コラボレーション(2)、インフラのモダン化(3)、統合(4)、データ保護(5)の5つにフォーカスしている。
1の生産性改善では、現在のワークスペースにおいて、ユーザーはさまざまな場所にデータを格納しており、チームメンバーも頻繁に変わる。静的にチームを定義していては間に合わない。ShareFileはファイルがどこにあっても簡単にアクセスできる。
2のコラボレーションでは、ワークフローの定義により、企業の境界を超えてファイルの共有、そして編集が可能となる。
3のインフラのモダン化は切実な問題だ。企業が導入しているファイルサービスやFTP製品は1990年代のもので、モバイル、クラウドへの対応が十分ではないし、相互運用性の問題もある。ShareFileは、このようなレガシーのFTPやファイルサーバを置き換えるものとなる。
4は重要なポイントで、ShareFileは単独の製品ではあるが、他のCitrix製品との統合、顧客の既存のストレージ、そしてMicrosoftの「Office 365」など他社のクラウドサービスとの統合が可能だ。
5のデータ保護では、セキュリティと規制順守を支援する。ShareFileは情報漏洩対策、情報の権利管理などの機能により、誰がどのデータやファイルにアクセスできるのかを設定できる。欧州で新しいデータ保護法「GDPR(EU一般データ保護規則)」が施行されるが、ITはこれに対応する必要がある。
最新機能について教えてください。
Tomlin氏 これまでShareFileはOutlookと統合し、自動で添付ファイルを転換できた。大規模なファイルのやりとりが簡単になるほか、ファイルを隔離できるので安全性も確保できる。これまではWindowsのみでだったが、Outlook.com、Office 365 Outlook Online、Outlook for Macもサポートした。
Gmailにも対応した。GmailはデフォルトでGoogle Driveを利用するが、ファイル容量に上限がある。ShareFile統合により上限がなくなり、ユーザー体験を改善できる。また、個人用のGoogle Driveではないところにワークスペースを設定できるというメリットもある。
Mac向けのネイティブデスクトップアプリも用意した。個人のフォルダ、SharePoint、Office 365、Boxなどにあるファイルにオンデマンドでアクセスできる。若いスタッフはMacを好むという顧客が多く、要求の多い機能だった。
また、これまで「Secure Forms」として提供してきた機能を進化させ、カスタムワークフローとして提供する。ユーザーはコードを書くことなく、ドラッグ&ドロップでテンプレートを利用してワークフローのフォームを作成できる。