IDC Japanは8月30日、国内企業のビッグデータ/分析に関する取り組み状況の調査結果を発表した。回答企業の半数以上が同社の定める5段階の成熟度で中間の「標準基盤化」に達したことが分かり、「予想以上に前向きな状況」と評価した。
調査は、同社が設計した企業でのテクノロジ活用の成熟度を測る「IDC MaturityScape Benchmark」を用い、500社のビッグデータ/分析における成熟度を5つのステージに分類した。2016年に続いて2回目となる。
ビッグデータ分析に対する日本企業の成熟度はやや高まったが、本格活用のステージにある企業はまだ少ないという
2016年の調査では、50.0%がプロジェクト単位で取り組むステージ2「限定的導入」に位置し、32.6%が部門全体で取り組むステージ3の「標準基盤化」にあった。2017年の調査では、ステージ2が33.1%に減少する一方、ステージ3は53.3%に増加している。個人活用にとどまるステージ1「個人依存」の割合も、2016年の4.5%から2017年は1.4%に減少した。
ただし、テクノロジをより本格的に活用していく段階のステージ4「定量的管理」(部門横断的、全社的な活用)や、ステージ5「継続的革新」(ビジネスに貢献する全社的な活用)に達している企業の割合に大きな変化は見られなかった。ステージ4は、2016年の10.3%から2017年は11.3%に微増し、ステージ5は2.6%から0.8%に減少している。
ソフトウェア&セキュリティマーケットアナリストの草地慎太郎氏
調査を担当したソフトウェア&セキュリティマーケットアナリストの草地慎太郎氏は、ビッグデータ/分析に対する取り組みの成熟度が高まった結果を評価しつつ、ステージ4以上に達する企業が少ない要因に、人材不足、組織間の壁、予算不足、システムやデータの断絶を挙げた。例えば、データ解析担当者(データサイエンティスト)を10人以上雇用する企業は14.8%、データ分析の専門組織を設置する企業は22.1%にとどまった。
企業に定着しつつあるビッグデータ分析の活用を本格化させる上で草地氏は、専門組織の設置や、経営層もしくはそれに近いレベルで職責を負う「チーフデータオフィサー」と呼ばれるようなデータ分析の責任者の確保が鍵を握ると話す。
調査では37.7%が専門組織の設置を検討していると回答。データ分析の責任者では、42.9%が部長クラスだったが、役員相当も21.1%に上った。また、データ分析に関する予算傾向では、前年度より10%以上予算を増やすとした企業が9.4%、10%未満の増加を予定する企業が47.0%だった。
草地氏は、「IT予算全体では横ばい傾向にあるが、ビッグデータ分析では増額を見込む前向きな企業が多い。ただ、本格的に組織体制や責任者を整備していく中で、数%の予算の増加で十分なのかは、検討すべき」と述べている。