「FinTechで重要なのはテクノロジである」と語るのは、機械学習の自動化ツールを提供するDataRobotのグローバルフィンテック担当ゼネラルマネジャーであるジャスティン・ディッカーソン氏だ。
その理由を同氏は「金融取引と顧客の間の障壁を取り除けるのがテクノロジ。優秀な銀行員が属人的に提供していた高品質のサービスを、テクノロジにより誰もが提供できるようになる。これが、FinTechのメリットだ」と語る。
国によっても定義は異なるが、FinTechには、「レンディング」「ペイメント」「ロボアドバイザー」「ブロックチェーン」の4つのカテゴリがある。レンディングは、お金を貸したい人と借りたい人をつなぐ仕組み、ペイメントは、オンライン決済の仕組み、ロボアドバイザーは、資産運用を自動化する仕組み、ブロックチェーンは、未知数の部分が多いものの、今後の金融業界の新しいインフラとして注目されている仕組みである。
DataRobotのグローバルフィンテック担当ゼネラルマネジャーであるジャスティン・ディッカーソン氏
ディッカーソン氏は「VENMOという個人間の送金を可能にするサービスがある。スーパーボールのテレビ放映中に、“ママ、ビール代を送金して!(VENMOのID)”というプラカードを掲げた少年が映ったが、この少年のVENMOのIDにママ以外の多くの人からビール代が送金されたこともある」と笑う。VENMOのようなほほ笑ましい事例とは別に、マネーロンダリングをいかに防ぐかといった物騒な一面もFinTechにはある。
「どちらがより重要かという話ではなく、どちらにも注目しなければならない」とディッカーソン氏は言う。マネーロンダリングの検出においては、高速かつ大量のトランザクションの中から、いかに不正な取引を効率的に見つけられるか重要になる。ここに、DataRobotの機械学習による自動化の技術が応用されている。また、異常検知の自動化にも利用され、より安全な金融サービスの実現を可能にしている。
金融業の無駄や不便をなくし利用者に価値を提供するのがFinTech
「最初に“FinTech”という言葉を聞いたとき、当たり前の言葉が重ねられているなと思った」と話すのは、データを活用したコンサルティングを事業とするギックスの代表取締役CEO(最高経営責任者))である網野知博氏だ。「“データサイエンティスト”という言葉もそうだが、サイエンスにはデータが不可欠。同様に、金融業においては、テクノロジが不可欠である。テクノロジのイノベーションをけん引してきたのが金融業界だ」と網野氏は言う。
データを活用したコンサルティングを事業とするギックスの代表取締役CEO、網野知博氏
網野氏は、「FinTechの本質を考えてみると、金融業界の無駄や不便をなくし、顧客がより利用しやすい仕組みを作ろうという取り組みの総称だ。一般的に、新しいテクノロジを使って、革新的な金融サービスを生み出すのがFinTechであるというイメージがあるが、枯れた技術であっても、新しい金融サービスを生み出すことができれば、それはFinTechと言える」と語る。
例えば、国内の為替取引に関しては、古くから「全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)」が構築されており、すべての銀行は全銀ネットに参加しているが、この仕組みは非常に高コストな仕組みのため、利用者に手数料という不便を与えている。「為替取引のコスト低減は、新しく市場に参入する側にとっても、消費者にとっても意味がある。そこで、近年高く注目されているのがブロックチェーンである」と網野氏は言う。